この記事でわかること
- 子持ち女性の正社員転職の不安を、4つに分ける考え方
- 調べれば事実にできる不安と、そうでない不安の見分け方
- 周囲の認識と本人の実感にずれがあることを示すデータ
- 今動くか、待つかを決めるときの判断軸
気になる求人を保存したまま、応募しないで数週間が過ぎている。子どもがいる状態で正社員の転職を考えると、多くの方がこの場所で止まります。条件が悪いわけでもない。でも、応募ボタンが押せない。
Indeed Japanが2024年に行った調査では、20代から40代の正社員として働くワーキングマザー1,000名のうち92.2%が仕事と子育ての両立に何らかの困難を感じ、66.5%が将来的なキャリアプランの見通しを持てないと回答しています。これは、すでに働いている方に聞いた数字です。まだ動き出す前のあなたが迷うのは、むしろ自然なことだと言えます。
この記事では、その迷いを4つに分けてみます。分けると、調べれば答えが出るものと、考えても答えが出ないものがはっきりします。不安を全部消してから動くのではなく、扱える形に変えてから決める。そのための整理です。
正社員転職の不安は、4つに分けられる
不安がひとかたまりのままだと、どこから手をつければいいのか分かりません。「子持ちで正社員は難しいかもしれない」という一文のなかには、性質のまったく違うものが混ざっているからです。
次の4つに分けてみてください。なお、この分類は行政が定めたものではなく、公表資料や実際に語られている悩みをもとに、編集部が整理したものです。
- 01
採用の不安
「子どもがいると、選考で落とされるのではないか」。相手の判断に関わる部分です。
- 02
条件の不安
「入社したあと、本当に18時に帰れるのか」。勤務時間や残業の実態に関わる部分です。
- 03
制度の不安
「転職したばかりで、時短や育休は使えるのか」。法律と会社の規定に関わる部分です。
- 04
運用の不安
「制度はあっても、実際は使いにくいのではないか」。配属先の状況に関わる部分です。
HINT
いま一番重いものを、ひとつ選んでみる
4つのうち、あなたの足を止めているのはどれでしょうか。ひとつに絞れないときは、「もしこれが解決したら応募できる」と感じるものから考えてみてください。
調べて答えが出るのは、後ろの3つ
4つを並べると、性質の違いが見えてきます。02と03は、調べればかなりの部分を事実に変えられます。04は完全に見通せるわけではありませんが、不確実さを減らすことはできます。
条件の不安は、求人票と面接で確かめられます。月平均の残業時間だけでなく、配属予定の部署でいつ残業が発生しやすいのかまで聞けば、かなり具体的になります。
制度の不安は、法律と会社の規定を確認すれば答えが出ます。たとえば育児・介護休業法には、労使協定を結んでいる場合に継続雇用1年未満の労働者を対象外にできる仕組みがあります。だから「入社1年未満は絶対に育休が取れない」わけではなく、会社ごとに違う、というのが正確なところです。内定後に人事へ確認すれば、あなたの場合の答えが分かります。
運用の不安は、面接で「配属予定の部署に、その制度を使っている方はいますか」と聞くところから始まります。また、厚生労働省の女性の活躍推進企業データベースでは、企業が公表している情報を検索できます。公表される項目は企業によって異なりますが、2026年4月からは、常時雇用する労働者が101名以上の企業で、男女間の賃金差異と女性管理職比率の公表が義務づけられました。確認できる会社の範囲が広がっています。
公表されている数字の見方については、女性が働きやすいホワイト企業の見分け方をまとめた記事でも扱っています。
そして残るのが、01の採用の不安です。これだけは、あなたが調べても答えが出ません。採否を決めるのは相手だからです。だからこそ、扱い方を変える必要があります。
採用の不安は消えない|だから、向き合い方を決める
落ちる理由を完全に知ることはできません。ただ、「何を根拠に判断されるべきか」には、公的な考え方があります。そこを知っておくと、必要以上に自分を責めずにすみます。
周囲の認識と、本人の実感にはずれがある
先ほどのIndeedの調査には、もうひとつ興味深い結果があります。ワーキングマザー本人と、その上司にあたる管理職とで、認識にずれがあるという結果です。
「管理職につきづらい」と感じているワーキングマザーは12.5%でしたが、管理職の側は25.5%がそう捉えていました。逆に「子どもに十分な時間を割けない」は本人が60.3%、管理職は47.5%と、こちらは低く見積もられています。
NOTE
この記事で引用したIndeed Japanの調査は、2024年2月に実施され、2024年3月1日に公表されたものです。すでに正社員として働いているワーキングマザーとその上司を対象としたもので、転職活動中の方を追った調査ではありません。
この調査が比べているのは、採用面接官ではなく、働いている本人とその上司です。それでも、周囲が思い描く「子育て中の社員の姿」と本人の実感がずれることがある、という点は覚えておく価値があります。あなたが黙っていれば、相手は自分の想像のまま判断することになります。
同じ調査では、正社員のワーキングマザーが両立のために実際に行っていることの1位が「職場の同僚に子どもや家庭の状況を伝える」で31.4%、2位が「働ける時間帯を事前に伝える」で26.6%でした。すでに働いている方たちも、察してもらうのではなく、伝えることを選んでいます。
「全員に聞いているのか、あなただけか」で切り分ける
とはいえ、面接で家庭のことを尋ねられると身構えてしまうものです。ここには、判断の目安になる線引きがあります。
厚生労働省は公正な採用選考について、応募者本人の適性・能力にもとづいて採用を行うことを基本とし、それと関係のない事項を把握しないよう企業に求めています。家族の職業や収入、家庭の環境などは、この「関係のない事項」にあたります。
そのうえで大阪労働局は、男女雇用機会均等法に抵触するおそれのある質問の例として、「結婚や出産後も働き続けようと思っていますか」「(男性だけに、または女性だけに)残業は可能ですか、また転勤は可能ですか」を挙げています。ただし同じページには、残業や転勤の可否について、労働条件の事前確認のため応募者全員を対象に質問することは妨げるものではない、とも書かれています。
この2つを合わせると、目安が見えてきます。全員に確認している労働条件の話には答え、あなただけに向けられた私生活の質問は、勤務条件に置き換えて返す。それだけで、受け答えはかなり楽になります。
「家庭の詳細については差し控えたいのですが、勤務については9時から18時まで対応できます」
「将来の家族計画については現時点でお答えを控えます。このポジションでは、長期的に経験を積んでいきたいと考えています」
知恵袋には、子育て中の女性が正社員への転職活動をするなかで、面接で子どものことを話した途端に空気が変わったように感じた、という相談も投稿されています。同じような体験をした方は実際にいます。ただ、そこで受けた印象を「子どもがいるから落ちた」と結論づける必要はありません。質問の受け方を決めておけば、面接は「判断される場」から「こちらも判断する場」に変わります。
今動くか、待つか|活動を始めることと、辞めることは別
転職活動を始めることは、今の会社を辞めると決めることではありません。ここが混ざると、決断が重くなりすぎて動けなくなります。
マイナビが2026年に行った調査では、小学生未満の子どもがいる正社員800名(男女各400名)のうち、女性の9割以上が「正社員としてキャリアを続けること」を理想と答えていました。一方で、同じ調査に回答した女性の27.3%が、育児との兼ね合いを理由とする離職を経験しています。続けたい気持ちと、続けにくい現実。その両方があるのが実際のところです。
「待つ」に理由があるときと、ないとき
待つほうがよい場面は確かにあります。判断の目安は、待つことで応募条件が具体的に良くなるかどうかです。
数か月後に保育時間や預け先の条件が変わる
現職で申請している制度の結果を待っている
応募条件に関わる資格の取得が間近にある
子どもの入園・入学の直前で、生活の形がこれから変わる
反対に、「子持ちはどうせ難しそう」「今より悪くなるかもしれない」といった理由で止まっている場合は、待つことで応募条件が良くなる見込みがはっきりしません。待つだけでは不安の原因が減りにくい、ということです。この場合は、応募を決めずに情報だけ先に集めます。
気になる求人を10件保存する。そのうち3社を公的なデータベースで調べる。自分の経験でどのくらいの年収帯が現実的かを見る。ここまでは、誰にも言わずにできますし、辞める決断も必要ありません。判断材料が増えたところで、あらためて考えれば十分です。
条件を伝えるタイミングは、一律に決めない
「子どもがいることを、いつ言えばいいのか」は多くの方が迷うところです。早く言えば不利になりそうで、遅く言えば後出しに見えそうで、決めきれない。
ここは、条件の種類で分けると迷いが減ります。「これが満たされなければ入社しない」という条件ほど、早い段階で確認する価値があります。求人が9時から18時の勤務を必須としていて、あなたは17時までしか働けないのなら、入社後に伝えてもミスマッチは解消しないからです。
一方、週2日の在宅勤務があると助かるという程度の希望条件なら、面接の後半や内定後に詳しく確認しても間に合います。制度の適用条件については、内定後に人事へ聞くのが最も確実です。
入社後、時短勤務を選んだあとのキャリアをどう考えるかは、時短勤務とキャリアの不安を扱った記事でも整理しています。また、給与や待遇の条件をどこまで詰めるかについては、女性の転職における年収交渉の前に見ておきたい項目もあわせて読んでみてください。
MOREARIAでは、迷いながら働き方を選び直してきた女性たちのインタビューを掲載しています。整理された正解ではなく、決めきれない時間も含めた物語のほうが、あなたの一歩のヒントになることがあります。
子持ち女性の正社員転職に関するよくある質問
迷っている段階でよく寄せられる疑問を3つ取り上げます。
不安が全部なくなってから応募したほうがいいですか?
採用の不安は、応募してみないと変わりません。相手が決めることだからです。一方で条件と制度の不安は、求人票と面接と公的なデータベースでかなり具体的に確認できます。運用の不安も、完全には見通せないものの、聞き方しだいで不確実さを減らせます。この3つを先に減らしてから応募する、という順番が現実的です。
子どもが小さいうちは、転職は避けたほうがいいですか?
一律に決められるものではありません。判断の目安は、待つことで応募条件が具体的に良くなるかどうかです。保育時間の変更や資格取得が間近なら待つ意味がありますが、「なんとなく怖い」だけなら、応募を決めずに情報収集だけ進める方法もあります。
面接で家庭のことを聞かれたら、答えなければいけませんか?
厚生労働省は、応募者本人の適性・能力と関係のない事項を採用選考で把握しないよう企業に求めています。家庭の詳細を必ず説明しなければならないものだと考える必要はありません。「家庭の詳細は差し控えますが、勤務については何時から何時まで対応できます」というように、自分の勤務条件に置き換えて答える方法もあります。
まとめ|分けてから、ひとつずつ
迷いが晴れないのは、あなたの覚悟が足りないからではありません。性質の違う不安が、ひとかたまりになっているからです。最後に、この記事の要点を振り返っておきましょう。
不安を、採用・条件・制度・運用の4つに分ける
後ろの3つは、求人票・面接・公的なデータベースで確かめていける
採用の不安は消えない。全員に聞かれた条件には答え、私生活の質問は勤務条件に置き換えて返す
転職活動を始めることと、今の会社を辞めることは別。情報収集だけ先に進めてよい
今日できるのは、4つのうち一番重いものをひとつ書き出すことだけで構いません。それが「調べれば分かるほう」だったなら、明日には少し軽くなっているかもしれません。全部を決めなくても、順番を決めるだけで前には進めます。あなたの歩幅で進む一歩を、応援しています。
参考資料
- Indeed Japan株式会社「ワーキングマザー・ワーキングファーザーの仕事と子育ての両立に関する調査」(2024年3月1日)
- 株式会社マイナビ「育児離職と仕事と育児の両立の男女差実態調査(2026)」(2026年5月15日)
- 厚生労働省「公正な採用選考をめざして」
- 大阪労働局「就職差別につながるおそれのある不適切な質問の例」
- 厚生労働省「育児休業制度特設サイト」
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