この記事の要点
14年間勤めたスーパーを辞め、未経験でカラオケバーの世界に飛び込んだ坂本明日香さん。「自分に価値はあるのか」と自問した苦しい2日間、涙をこらえながらも覚悟を決めた瞬間がありました。人を輝かせる場所をつくりたいという思いが、彼女の選択を動かし続けています。「本当はどうしたい?」と問い続けることが、自分らしい働き方への最初の一歩になります。
画面越しでも、その人の覚悟は伝わる。
柔らかく、丁寧で、落ち着いた話し方。言葉を選びながら、一つひとつ確かめるように話す姿が印象的だった。けれど、夢の話になった瞬間だけ、ほんの少しだけ声の温度が変わる。
その変化に気づいたとき、「この人は、自分の人生を自分で選び続けてきた人だ」と感じた。
不安の中でも動き続けた彼女の話は、きっとどこかで自分と重なるはずです。
表現することをやめなかった14年間|やり切った先で気づいたこと
表現することを続けてきた日常
小学生の頃から歌うことが好きで、人前に立つことへの憧れを持ち続けていた坂本さん。最初はとても緊張していたといいますが、CHEMISTRYへの憧れから歌い始め、社会人になってからも小さなライブハウスでステージに立つ時間を続けていました。スーパーで働きながら、休日には音楽活動を続ける。それが彼女にとっての日常でした。
お笑いへの情熱も小学生時代からのものです。当時から芸人に夢中で、佐久間一行さんを追いかけていました。5分間で人を爆笑させられる人たちへのリスペクトがいつしか「自分もあちら側に立ちたい」という気持ちに変わり、R-1グランプリへの挑戦まで至りました。一回戦敗退、と少し照れながら話す姿の中に、「やりたいと思ったことはやる」という揺るぎない軸が見えました。
スーパーに14年間、正社員として勤めながら、音楽もお笑いも諦めなかった。それは特別な挑戦ではなく、彼女にとっては自然な選択だったのだろう。やってみたいと思ったら、やる。ただそれだけのことを、ずっと続けてきた人だった。
やり切った先で感じた違和感
やりたいことを一通りやり切ったと感じたとき、ふと気持ちが変わっていきました。達成感があるはずなのに、どこか腑に落ちない感覚が残る。自分でも、なぜそう感じるのかすぐにはわからなかったといいます。
「自分だけが出るのは違うと感じたんですね。」
達成感の先で、自分が主役であることへの違和感が静かに芽生えていました。やりたいことをやり切った先で見えてきたのは、「自分が前に出ること」への飽きではなく、「誰かが輝く場所をつくること」への興味でした。なぜそう感じたのかを考えたとき、見えてきたのは一つの思いでした。
「自分が輝くより、人が輝く場所を作りたいなって思ったんです。」
その言葉を聞いたとき、価値観が静かに変わっていった瞬間を感じた。自分が表現者として前に出ることへの情熱が、いつしか「誰かの表現を支える場所をつくること」へと、自然に移っていったのだろう。

未経験からのキャリアチェンジ|1時間の出会いが人生をつないだ
たった1時間の出来事がつないだ未来
転機は、思いがけない形で訪れました。
スーパーを退職し、次のステップを探していた頃。友人に誘われて訪れたのが、福岡・中洲にあるカラオケバーでした。滞在時間は1時間ほど。その場では「ここだ」と感じたわけではなかったといいます。中洲で飲んだこともなく、まったくの未知の場所だったと、当時を振り返りながら話してくれました。
ただ、そこで交わした会話が後から意味を持ち始めます。たまたま知り合った女性スタッフと連絡先を交換したことがきっかけで、人手が必要なタイミングと重なり、アルバイトとして声をかけてもらいました。
「ライブハウスをやりたいんです」と話したとき、コミュニティの代表からこう言われました。
「ライブハウスを小さくしたのが、バーの経営と同じことだよ。ここで練習していったらいい。」
その一言が、頭の中に残り続けた。点と点が、静かにつながった瞬間だった。
「やってみる」と決めた瞬間
ライブハウスとバー。一見まったく違うものに思えますが、代表の言葉で、やりたかったことと今いる場所がつながって見えてきました。
「じゃあ、ここでやってみようって思いました。」
派遣の仕事をしながら、週1〜2回のアルバイトからスタートしました。もともと自費でイベントを企画していた彼女にとって、お金をもらいながらイベントができるという感覚は、大きな気づきだったといいます。普段は飲み会を自分でお金を払って開いていたのに、ここではお金をもらいながら同じことができる。そのシンプルな発見が、背中を押しました。
大きな決断というよりも、小さな一歩。ただ、その一歩が確実に流れを変えていった。

人を輝かせる仕事へ|自分の役割が変わった瞬間
視点が変わったときに見えたもの
イベントを重ねる中で、少しずつ視点が変わっていきました。
最初は自分がどう見られるかを気にしていましたが、次第に「誰かがどう感じているか」に意識が向くようになります。ある日、参加者同士が自然と打ち解けている様子を見たとき、強く印象に残ったといいます。この場所が、誰かにとって特別な居場所になっている。その実感が、仕事の意味を変えていきました。
「この人、この場所だとすごく輝くなって思ったんです。」
その言葉の奥に、彼女の中で価値の基準が変わっていったことが伝わってきた。どこにいても輝けるわけではない。でも、その人がピンポイントで輝ける場所がある。そう気づいたとき、自分がやるべきことの輪郭が、少しずつはっきりしてきた。
場所をつくるという選択
自分だけが前に出るのではなく、人が前に出られる場所をつくる。その意識が強くなるにつれて、仕事の意味も変わっていきました。
輝く場所を持ちたい、ファンを作る場所を持ちたい——そう思うようになっていったと、穏やかな口調で話してくれました。現在は月30以上のイベントを運営し、月間250〜300人が訪れるコミュニティに成長しています。月額15,000円のサブスク事業ではカラオケバーの無料利用に加え、レンタルスペース、トレーニングジム、歯のホワイトニング、美容サービスまでをカバー。個人事業主や夢を持つ人が集い、会員同士の協業やイベント共催が生まれる場所になっています。
— KEY MESSAGE —
自分が輝くより、
人が輝く場所を作りたい。
不安と涙の2日間|「自分に価値はあるのか」という問い
「自分に価値はあるのか」という問い
2月の終わり。売上100万円という目標に対して、25日間かけて積み上げた数字は78万円。残り2日で22万円足りない状況だった。
ミーティングの中で、代表からこう言われた。「ここを突破できる力があるなら、店長になっていい」。達成できなければ、次のチャンスは半年後。
「はい」と答えた。でも電話を切ったあと、手が震えていたという。
「自分に22万円払ってくれる人っているのかなって思って。」
断られたらどうしよう。迷惑だと思われたらどうしよう。そもそも、自分に価値があるのか。頭の中では、不安ばかりが浮かんでいた。これまで積み上げてきた自信が、一瞬で揺らいでいく感覚。それでも、「はい」と言った自分がいた。
行動し続けた理由と覚悟
それでも、5分後に思考を切り替えた。
「考えてても意味ないなって思ったんです。」
そこからは行動だった。連絡できる人すべてに連絡をし、何度も文章を書き直しながら伝え続けた。来られない人には、遠隔でPayPayで1,000円送ってもらいテキーラを飲む、という形もお願いした。その作戦だけで5万円ほどが集まった。
既読がつかない時間、返信が来ない時間、そのすべてが不安を大きくした。それでも、手を止めることはなかった。
みんなに背中を見せたかった。何でもやろうと思ったらできるんだということを、自分が体で示したかった。自分のためだけではなかった。来てくれる人、応援してくれる人、その存在が背中を押し続けた。
「逆に達成したらみんな喜んでくれる。」
その思いが、最後まで足を動かし続けた。
最終日、閉店15分前。最後のお客様が来てくださり、残り分を一気に埋めてくれた。売上は103万円に到達した。
「それが一番の感動でした。」
それは単なる達成ではなく、自分を越えた経験だった。不安で震えていた自分が、2日間で別の自分になっていた。

言葉と問いで変わった自分|愚痴をやめたら流れが変わった
数を追う中での違和感
イベントを増やし続ける中で、別の葛藤もありました。
「営業みたいになってるなって思ったんです。」
人を呼ぶことばかりに意識が向き、本来大切にしたかった関係性が薄れていることに気づきました。「薄っぺらくなってないかな」という感覚が、じわじわと積み重なっていきました。数字は積み上がっていても、自分が本当にやりたかったことから少しずれていく感覚。そこでやり方を変え、一人ひとりに向き合うようにしました。
愚痴をやめたことで見えた変化
以前は、感情に振り回されることもあったといいます。気性が激しく、すぐ怒ってしまう自分がいました。そんな中で出会ったのが、小林正観さんの著書『ありがとうの奇跡』でした。
「愚痴・悪口・文句・泣き言を言わないで3ヶ月間過ごすと、自分に必要な頼まれごとが来て、それが使命になっていく」という考え方が、内側から変えていきました。
「言わなくなったりとかすると、今度思わなくなるから。」
今では周囲から「怒ることないよね」と言われるようになり、頼まれごとが増え、流れが変わっていったといいます。変わったのは環境ではなく、自分の内側でした。
これから一歩踏み出したい人へ|本当はどうしたいと問い続けること
環境が人を動かす
坂本さんが大切にしていることがもう一つあります。『1%の実行する人たち』と一緒にいること。憧れの人や尊敬する人の最も近くにいることで、自然とやらざるを得ない環境が生まれます。頑張れる理由を探すより、頑張らざるを得ない場所に身を置く。そのシンプルな選択が、半年間の飛躍を支えていました。
「本当はどうしたい?」という問い
最後に聞いた言葉は、とてもシンプルだった。
「本当はどうしたい?って、自分に問い続けてほしいです。」
外側を気にして振り回されるのではなく、自分の内側に問いかけること。「本当は」という言葉をつけることで、自分を一度深く掘り下げる。問い続けていくと、本当の自分の行きたい道が自然と出てくる——そう、坂本さんは言います。
坂本さんが自分を一言で表すなら
インタビューの最後、自分を一言で表すとしたら?と聞いたとき、少し考えてからこう答えてくれました。
「誰も蹴落とさないチャレンジャー」
お気に入りの芸人さんのキャッチフレーズ「誰も傷つけないお笑い」から着想した言葉だといいます。誰かを踏み台にしなくても、前に進める。誰かを傷つけなくても、挑戦できる。そう信じて動き続けてきた人だからこそ、自然と出てきた言葉なのだろう。
挑戦しながら、同時に周りの人を引き上げる。自分が前に進むことで、誰かの背中を押せる存在でありたい。その在り方が、話を通じて、確かに伝わってきた。
あの日の覚悟と、いま|彼女が見つけた道
坂本さんの話は、特別な成功の話ではない。
14年間同じ場所で働き続けながら、やりたいことを諦めなかった。未経験の世界に飛び込み、手が震えるほどの不安の中でも、5分後には動き出していた。数を追いすぎて違和感を覚えたときは、やり方を変えた。言葉が人を変えると知ったときは、自分の口から出る言葉を見直した。
その一つひとつは、大きな決断ではなかったかもしれない。でも、その積み重ねが今の彼女をつくっている。
やり切った先で違和感を覚えたとき、その感覚から目を逸らさなかった。不安で手が震えた夜も、動くことをやめなかった。
不安があっても、迷いがあっても、「本当はどうしたい?」という問いだけを手放さなかった。
答えは、外ではなく、自分の中にある。そのことを、この時間が静かに教えてくれた。

「日本にいる限りは、一回は会いに来てください。」
福岡・中洲で、あなたのことをノリノリでお迎えしています。
INTERVIEW

坂本 明日香
株式会社Growth Partners Japan/交流会・イベント企画・SNS発信
人と人をつなぐ交流イベントやカラオケバーの運営を中心に活動。月に200〜300人が集まるコミュニティを運営し、「誰もが自分らしく輝ける場所」をテーマに場づくりを行っている。交流会やイベント企画、SNS発信を通じて前向きな人同士をつなぎ、人の夢や挑戦を後押しするきっかけづくりに取り組んでいる。
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