この記事でわかること
- 時短勤務のキャリア不安を、時間・経験・評価・将来の4つに分ける方法
- 一時的な配慮なのか、停滞が始まっているのかを見分ける視点
- 今すぐ動いたほうがいい状態と、しばらく待っていい状態の違い
- 働き方を変える前に、小さく試して確かめる3か月の進め方
保育園に向かう自転車をこぎながら、ふと考える。この働き方をあと何年続けるんだろう。仕事は嫌いじゃない。でも、任される仕事の手ざわりが変わった気がする。
そう感じているのは、あなただけではありません。株式会社マイナビが2026年に実施した調査では、小学生未満の子どもがいる正社員女性400名のうち44.0%が、利用している職場の制度として時短勤務を挙げました。そして同じ調査で、正社員女性はすべての年代で9割以上が、正社員としてキャリアを続けることを理想としています。時短を選んだ方の多くは、キャリアを手放したつもりではないということです。
それでも、その感覚を言葉にできないまま時間だけが過ぎていく。時短勤務のキャリア不安がやっかいなのは、原因がひとつではないからです。時間の問題なのか、仕事の中身の問題なのか、評価の問題なのか。混ざったまま考えていると、どこから手をつければいいのかわからなくなります。
この記事では、答えを出すことを急ぎません。まず不安を4つに分けて、自分がどれで詰まっているのかを確かめる。そのうえで、今動くのか、もう少し待つのかを決められる状態を目指します。あなたの状況によって、正解は変わっていいものです。
時短勤務のキャリア不安を4つに分ける|時間・経験・評価・将来
「キャリアが不安」という言葉のままでは、対策が決まりません。ここでいったん、4つに分けてみます。以下は行政や研究機関が定めた分類ではなく、編集部が整理したものです。
- 01
時間の不安
今の勤務時間でも生活がぎりぎりで、これ以上は増やせないと感じる
- 02
経験の不安
責任のある仕事から外れ、後から語れる経験が積めていない気がする
- 03
評価の不安
成果を出しているつもりでも、評価にどう反映されているのかわからない
- 04
将来の不安
数年後、自分が何ができる人になっているのか想像できない
HINT
この半年を、言葉にしてみる
この半年で、新しくできるようになったことはありますか。主担当として持った仕事はありましたか。答えが出てこないとき、それは能力の問題ではなく、機会が回ってきていないだけかもしれません。
この4つは、似ているようで手当てがまったく違います。
時間の不安は、家庭側の段取りや会社の制度で動かせる部分があります。経験の不安は、上司との仕事の割り振りの話です。評価の不安は、評価制度と目標設定の話。そして将来の不安は、多くの場合、前の3つが未解決のまま積み上がった結果として出てきます。
だから、いちばん大きく見える将来の不安から手をつけようとすると、たいてい行き詰まります。将来は、直接動かせないからです。
4つのうち、どれがいちばん近いか
紙でもスマホのメモでも構いません。ここ1か月で「もやっとした場面」を3つ書き出して、それぞれ01から04のどれに当てはまるか印をつけてみてください。
会議の案内が来なかった。後輩が新しい案件を任された。定時に帰るときに視線を感じた。評価面談で「今は無理しなくていい」と言われた。
書き出してみると、偏りが見えることがあります。3つとも02なら、話す相手は上司です。3つとも01なら、まず必要なのは職場の交渉より家の段取りかもしれません。同じ「キャリア不安」でも、次に会うべき人が違ってきます。
配慮なのか、停滞なのか|半年を目安に見分ける
時短勤務でよく起きるのが、悪意のない配慮によって経験が減っていく状況です。
労働政策研究・研修機構が2025年に開催したフォーラムの研究報告で、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの矢島洋子氏は、子育て中の社員に対して「こういうことはできないのではないか」という過剰な配慮が行われやすいと指摘しています。そして、同じ子育て中の正社員女性であっても対応できる仕事の範囲は方によって異なるため、決めつけずに、ひとりずつ状況を把握して業務を割り当てることが大切だと述べています。
つまり、仕事が減っていることの理由は「あなたの評価が下がったから」とは限りません。確認されないまま、よかれと思って減らされていることがあります。だとすれば、こちらから確認しないかぎり、状況は変わりません。
しばらく待っていい状態
復職して間もない時期に仕事量が減っていても、次のような状態なら、必ずしも停滞とは言えません。以下の見分け方も、編集部が整理した目安です。
主担当として持っている領域が、狭くても残っている
半年後に任せたい仕事について、上司から具体的な話がある
評価について「何を満たせば次に上がるか」を説明してもらえる
半年前にはできなかったことが、ひとつ以上できるようになっている
このうち2つ以上に当てはまるなら、キャリア形成が完全に止まっているとは限りません。急いで働き方を変える前に、次の評価面談まで様子を見るという選択肢もあります。焦って動くより、体力を戻すほうが先になる時期もあります。
動いたほうがいいサイン
一方で、次のような状態が半年から1年ほど続いているなら、確認を始めるタイミングです。
「時短だから」という理由だけで、一律に仕事から外される
1年以上、ほぼ同じ定型業務のままで新しい経験が増えない
評価が下がったのに、理由を具体的に説明してもらえない
キャリアの話をすると「子どもが大きくなったら」で毎回終わる
半年から1年という期間は、法律で決まったものでも、研究で示された基準でもありません。評価サイクルの区切りをもとに、編集部が実務上の目安として置いたものです。ただ、次の評価をもう一度見送ると、多くの職場では実質的に1年以上が過ぎます。等級要件を満たす経験がないまま数年たっていた、という状態につながることがあります。
伝え方にはコツがあります。「時短だからですか」と聞くと、相手は否定するしかありません。「今回の役割変更の理由を教えてください」と、事実を尋ねる形にすると、話が具体的になります。
もうひとつ聞いておきたいのが、評価の前提です。「目標値はフルタイムの方と同じですか、それとも勤務時間に応じて調整されていますか」。ここが確認できると、評価が下がった理由が時間の長さなのか、成果そのものなのかを切り分けられます。
在宅勤務を組み合わせている場合は、時間だけでなく場所の制約も重なります。テレワークで女性のキャリアを伸ばす方法も、あわせて確認してみてください。
働き方を変える前に|3か月だけ小さく試す
不安がはっきりしてくると、次は「動くかどうか」の判断になります。ここで多いのが、フルタイムに戻るか、辞めるか、という大きな二択で考えてしまうことです。
でも、その前にできることがあります。取り消しのきく範囲で、小さく試すという方法です。
前提として、会社側の選択肢は以前より増えている可能性があります。厚生労働省の令和7年度雇用均等基本調査(事業所調査、有効回答3,291事業所)によると、3歳以降の子どもを育てる方に向けて何らかの措置を設けている事業所は69.5%でした。短時間勤務制度が59.4%、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げが50.7%と続きます。フルタイムか時短かの二択しかない、と決まっているわけではありません。
たとえば仕事の側なら、月に1件だけ主担当を持ってみる。意思決定に関わる会議に、ひとつだけ戻してもらう。社内公募に1回だけ応募してみる。生活の側なら、フルタイムを想定した時刻で2週間だけ動いてみる。勤務契約は変えずに、起床から就寝までの時間だけを本番どおりにしてみます。
3か月ほど続けて、記録を残します。この3か月も、四半期の区切りに合わせて編集部が置いた目安です。仕事のほうで何ができたか、家庭のほうで何が回らなかったか。この記録があると、次の判断は感覚ではなく事実の上でできます。
試した結果で、進む方向が変わる
3か月やってみて、仕事は増やせたけれど家庭が回らなかったのなら、必要なのは働き方より家の段取りや制度の見直しです。家庭は回ったけれど、仕事の中身が変わらなかったのなら、話す相手は上司や人事になります。
どちらも動かなかった場合は、部署や会社という枠のほうを見る番かもしれません。ただ、ここまで確かめてから考えるのと、最初から「この会社では無理」と決めるのとでは、選べる範囲がまったく違います。
両立そのものが限界に近いと感じているときは、キャリアの話より先に、負荷を減らす方法を探すほうが先です。子育てと仕事の両立がつらいときの考え方も参考になります。
雇用形態を変えるという選択肢もありますが、収入や社会保険の扱いが変わるため、正社員からパートにした場合の収入・社保・年金の変化は数字で確かめてから判断してください。
MOREARIAでは、働き方を変えながらキャリアを続けてきた女性たちのインタビューを掲載しています。順調に進んだ話だけではなく、迷いながら選び直してきた物語が、今のあなたのヒントになるはずです。
時短勤務のキャリア不安についてよくある質問
最後に、迷いやすい点をまとめました。
不安を分けても、結局どれも当てはまる気がします
それでも構いません。全部に印がついたときは、いちばん最近もやっとした場面をひとつだけ選んでください。4つ同時に手をつける必要はなく、ひとつ動かすと他が軽くなることもあります。
上司に相談したら、面倒な人だと思われませんか?
「仕事を増やしてください」ではなく、「今の勤務時間で担える範囲で、経験の価値が高い仕事をひとつ持ちたい」という伝え方にすると、要望ではなく相談として受け取られやすくなります。会社側にも、本人の意向を確認することが求められる方向に変わってきています。
待つと決めた場合、いつ見直せばいいですか?
次の評価面談を目安にすると決めやすくなります。そのときに、この記事の4つの分け方をもう一度見て、印のつく場所が変わっているかを確かめてみてください。変わっていなければ、待つ期間はいったん区切りです。
まとめ|分けて考えれば、今日できることが見えてくる
時短勤務のキャリア不安は、ひとかたまりのまま抱えていると、大きく重くなります。分けてみると、今日動かせる部分と、しばらく置いておける部分があることがわかります。最後に要点を振り返ります。
不安は時間・経験・評価・将来の4つに分けると、次に会うべき相手が決まる
仕事が減っている理由は、評価ではなく「確認されないままの配慮」のこともある
半年から1年、新しい経験が増えない状態が続くなら確認を始める
大きな二択の前に、3か月だけ小さく試して記録を残す
今日できるのは、ここ1か月のもやっとした場面を3つ書き出すことだけでも十分です。それだけで、次に何を聞けばいいかが少し見えてきます。あなたの歩幅で進む一歩を、応援しています。
参考資料
- 株式会社マイナビ「育児離職と仕事と育児の両立の男女差実態調査(2026)」(2026年5月15日)
- 厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」(事業所調査)
- 独立行政法人労働政策研究・研修機構 第137回労働政策フォーラム 研究報告1「子育て期の柔軟な働き方とキャリア形成支援」(2025年)
SUPERVISED BY
akina
MOREARIA Inc. 代表 / MOREARIA編集長
MOREARIA編集長。「やりたいことはあるけど、踏み出せない」女性に向けて、挑戦する人たちのリアルな物語と、自分らしい一歩を考えるきっかけを届けるメディアを運営。マーケティング支援事業や実践型スクール「MOREARIA LAB」も展開している。
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