この記事でわかること
- 時短勤務がいつまで使えるのか、3歳・小学校就学前・小学校以降で変わる制度の全体像
- 時短勤務中のキャリア不安を減らすために、会社へ確かめておきたい6項目
- 評価が「働いた時間」で決まっているのか「成果」で決まっているのかの見分け方
- フルタイムに戻るかどうかを、生活・継続・キャリアの3段階で判断する方法
時短勤務を選んだあと、ふとした瞬間にキャリアのことが気になる。会議の案内が自分に届かなくなった。後輩が新しい案件を任されている。今日も定時で職場を出ながら、このままでいいのだろうかと考えてしまう。
同じように感じている方は、決して少なくありません。株式会社マイナビが2026年に実施した調査では、小学生未満の子どもがいる正社員女性400名に利用している職場の制度をたずねたところ、44.0%が時短勤務を挙げました。そして同じ調査で、正社員女性はすべての年代で9割以上が、正社員としてキャリアを続けることを理想として挙げていました。時短を選ぶことと、キャリアを諦めることは、同じではありません。
この記事では、時短勤務のキャリア不安を「気持ちの問題」として扱いません。制度がいつまで使えるのか、収入はどう変わるのか、評価は何を見ているのか。確かめられる事実から順に整理していきます。読み終えたときに、明日誰に何を聞けばいいかが決まっている状態を目指します。
時短勤務はいつまで使える?|3歳・小学校就学前・小学校以降の3段階
時短勤務の期限は、ひとつの決まった年齢ではありません。子どもの年齢によって、法律が求めるものが3段階で切り替わります。
まず押さえておきたいのは、法律で定められた「原則6時間の短時間勤務制度」の対象は、3歳未満の子どもを養育する方だという点です。厚生労働省は、事業主に対して、3歳に満たない子を養育する対象労働者に、1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含む短時間勤務制度を設けることを求めています。
ただし、対象になるのは要件を満たす方に限られます。労使協定が結ばれている場合、継続して雇用された期間が1年に満たない方や、週の所定労働日数が2日以下の方などが対象外になることがあります。自分が対象かどうかは、就業規則と労使協定で確認できます。
そして2025年10月1日からは、その次の段階が新しく加わりました。3歳から小学校就学の始期に達するまでの子どもを養育する方について、事業主は次の5つの中から2つ以上を選んで用意する義務があります。始業時刻の変更、テレワーク等(月10日以上)、保育施設の設置運営等、養育両立支援休暇の付与(年10日以上)、そして短時間勤務制度です。働く側は、会社が用意した措置の中から1つを選んで利用できます。
ここで大切なのは、5つすべてが用意されるわけではないということです。会社が選ぶのは2つ以上。その2つに短時間勤務が入っていなければ、3歳以降は時短という形では続けられません。逆に、時差出勤やテレワークが選ばれていれば、勤務時間を戻しながら朝夕の負担を減らすという道が出てきます。
3段階を整理すると、確認すべき相手が変わる
段階が変わると、確認する先も変わります。法定部分は調べればわかりますが、会社が何を選んだかは、聞かなければわかりません。
- 01
3歳未満
法律が原則6時間の短時間勤務制度を求めている段階。就業規則で自社の運用を確認する
- 02
3歳から小学校就学前
会社が5つの措置から2つ以上を選んでいる段階。人事に「うちは何を選びましたか」と確認する
- 03
小学校入学以降
「柔軟な働き方を実現するための措置」の法定対象から外れる段階。会社独自の制度があるかどうかで変わる
03について補足すると、小学校入学後に育児関係の制度がすべてなくなるわけではありません。たとえば子の看護等休暇は、2025年4月の改正で対象が小学校3年生修了までに広がり、取得できる理由にも学級閉鎖や入園・入学式などが加わりました。終わる制度と残る制度を分けて把握しておくと、入学前の見通しが立てやすくなります。
制度がある事業所では、小学校就学前までが最多
ここが、多くの方が想像していない現実かもしれません。
厚生労働省の令和7年度雇用均等基本調査(事業所調査、有効回答3,291事業所)によると、3歳以降の柔軟な働き方を実現するための措置として短時間勤務制度を導入している事業所は59.4%でした。そして、その制度がある事業所を100としたとき、最長で利用できる期間は「小学校就学の始期に達するまで」が57.7%と最も高くなっています。次いで「小学校3年生修了(または9歳)まで」が16.2%、「小学校卒業(または12歳)まで」が12.8%、「小学校卒業以降も利用可能」が13.3%でした。
つまり、3歳以降の短時間勤務制度がある事業所のうち6割近くが、小学校入学のタイミングで利用期間が終わる設計になっているということです。保育園より預かり時間が短くなり、長期休みがあり、宿題や持ち物の管理が増える時期に、制度のほうは区切りを迎えます。いわゆる「小1の壁」は、学童の時間や登下校、長期休暇など複数の要因が重なったものですが、その一因である制度上の切れ目は、統計からも確認できます。
だからこそ、確認するタイミングは「困ってから」では遅くなります。子どもが3歳になる少し前と、小学校入学の1年前。この2回は、意識して制度を確認しておきたい時期です。
収入の下がり方と、受け取れる可能性のある給付金
時短勤務では、働かなかった時間に対応して賃金が下がるのが一般的です。ここは制度の設計上、避けにくい部分です。
ただし、知られていない支援があります。厚生労働省によると、2歳未満の子どもを養育する雇用保険の被保険者で一定の要件を満たす方には、短時間勤務中の賃金の10%相当額が育児時短就業給付金として支給されます。給付額と賃金の合計が、短時間勤務を始める前の賃金を超えないよう給付率は調整されます。
対象は2歳未満なので、期間は限られています。それでも、収入の落ち込みを理由に時短を諦めようとしている段階なら、自分が対象になるかどうかを確認する価値はあります。要件の判断は個別の事情で変わるため、勤務先の担当部署か、ハローワークで確認するのが確実です。
NOTE
本文で紹介している「柔軟な働き方を実現するための措置」は、2025年10月1日に施行されたものです。各社の対応は現在も進んでいる最中のため、会社からの案内がまだ届いていない場合でも、制度が用意されていないとは限りません。
確かめておきたい6項目|制度・収入・評価・仕事内容
ここから先の6項目は、行政が定めた基準ではなく、公表資料と制度の内容をもとに編集部が整理したものです。順番に意味があり、制度と収入という動かしにくいものから先に確かめ、そのあとで評価と仕事内容に進みます。
- 01自社の時短勤務が、子どもが何歳になるまで使えるか
- 02時短によって給与・賞与・退職金の算定がどう変わるか
- 033歳以降に会社が選んでいる措置は何と何か
- 04今の勤務時間で、評価はどこまで取れる設計になっているか
- 05次の等級に上がるために足りていない条件は何か
- 06主担当として残っている仕事と、次に任される予定の仕事
制度と収入を確かめる(01〜03)
最初の3つは、上司ではなく人事や就業規則で確認できる部分です。上司に聞くと「たぶん就学前まで」といった記憶ベースの答えが返ってくることがあり、それを前提に計画を立てると後で崩れます。
01では、就業規則の育児関係の条文を見ます。法定どおり3歳未満なのか、就学前まで延ばしているのか、それ以降もあるのか。ここが今後3年から6年の生活設計の土台になります。
02では、時間比例で下がる部分と、そうでない部分を分けます。基本給が時間比例で下がるのは一般的ですが、賞与の算定方法や、退職金・企業年金の計算にどう反映されるかは会社ごとに違います。目先の月給だけを見ていると、数年後にまとまった差になって気づくことがあります。
03は、2025年10月以降に生まれた新しい確認事項です。「当社が選んだ2つ以上の措置は何ですか」と人事に聞きます。法律では、子どもが3歳の誕生日の1か月前までの1年間に、会社が選んだ措置の内容と申出先を個別に周知し、利用の意向を確認することが求められています。周知が来る前に、自分から聞いても構いません。
評価の基準を確かめる(04・05)
ここが、時短勤務のキャリア不安の中心にある部分です。
04で見たいのは、評価が「成果」を見ているのか、「対応できる時間の量」を実質的に見ているのかという点です。評価表に「売上達成率」「品質」「案件完了率」が並んでいれば成果寄り、「担当件数」「突発対応」「夜間の会議への参加」が実質的に重視されているなら、勤務時間が評価に影響しやすい構造だと考えられます。
労働政策研究・研修機構が2025年に開催したフォーラムの研究報告で、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの矢島洋子氏は、短時間勤務を利用している方の評価について、時間の減少に伴って目標設定の水準もフルタイムより下げ、その水準を100として評価するほうがよいこと、そして一人あたりではなく時間あたりの生産性で評価することが大切だと述べています。
これは「時短だから評価が下がって当然」でも「時短でも同じ評価にすべき」でもない、第三の考え方です。上司に聞くときも、この形にすると話が具体的になります。「今の勤務時間で最高評価を取る場合、どこまで達成すればよいですか」「目標値はフルタイムの方と同じですか、それとも調整されていますか」。
05では、等級や昇進の要件を確認します。「大型案件の主担当経験」「マネジメント人数」など具体的な要件がある場合、それが今の勤務時間で取得できるものなのかを聞きます。ここまで具体化すると、「時短だから昇進できない」という思い込みも、「時短でも何も影響しない」という楽観も避けられます。
評価や働き方の見え方は、勤務時間だけでなく働く場所によっても変わります。在宅勤務を組み合わせている方は、テレワークで女性のキャリアを伸ばす方法もあわせて確認しておくと、確かめる項目が整理しやすくなります。
仕事の中身を確かめる(06)
最後の1つは、量ではなく中身の話です。
時短勤務では、案件数でフルタイムの方と競う必要はありません。「5件の補助」より「1件の主担当」のほうが、判断した内容も成果も、後から説明しやすい形で残ります。どちらが良いという決まりがあるわけではありませんが、経験として語れるかという観点では違いが出ます。
確認したいのは次の点です。今、自分が主担当として持っている領域はどこか。半年後に一段難しい仕事を任せるとしたら、どんな仕事があるか。勤務時間の中で担える範囲で、担当を広げられる仕事はあるか。
「仕事を増やしてください」ではなく、「経験の価値が高い仕事を1つ持ちたい」という伝え方にすると、上司も具体的に返しやすくなります。
フルタイムに戻るか|生活・継続・キャリアの3段階で判断する
フルタイムに戻る判断は、「子どもが何歳になったら」という年齢だけで決めないほうが現実的です。以下の3段階も、編集部が整理した考え方です。
第1段階は、物理的に可能かどうか。定時に出て迎えに間に合うか、電車が遅れても15分から30分の余裕があるか、病気のときに自分以外の対応手段が1つ以上あるか。ここは時刻表と分単位で確かめられます。
第2段階は、半年から1年続けられるかどうか。毎日ぎりぎりで、パートナーの代わりが利かず、睡眠が削られる形なら、1か月は回っても半年は続きません。「できる」と「続けられる」は、別の質問です。
第3段階は、戻ることでキャリアが実際に変わるかどうか。ここが抜けやすい部分です。復帰前に上司へ、「フルタイムに戻った場合、今と比べて担当業務や期待される役割はどう変わりますか」と確認します。答えが「勤務時間が延びるだけで、仕事はほぼ同じ」なら、増えるのは負担だけということになります。
3つがそろわないときは、フルタイムか時短かの二択で考える必要はありません。時差出勤、テレワーク、週の一部だけ勤務時間を延ばす形など、2025年10月以降は会社が用意している選択肢が増えている可能性があります。両立のしんどさが限界に近いと感じている場合は、子育てと仕事の両立がつらいときの考え方もあわせて読んでみてください。
小さく試してから決める
いきなり働き方を変えるのではなく、先に試す方法もあります。
復帰を考えている時期の2週間から4週間前に、フルタイムを想定した生活を実際にやってみます。勤務契約を変えるわけではなく、起床、登園や登校、迎え、夕食、入浴、就寝の時刻を想定どおりに動かしてみるだけです。紙の上で「たぶん回る」と思っていたことが、実際には10分足りないと気づくことがあります。
仕事の側も同じです。月に1件だけ主担当を持つ、意思決定に関わる会議に1つだけ戻る、社内公募に1つ応募してみる。3か月ほど続けて、成果と家庭への負荷を記録すれば、次の判断はその記録の上でできます。
雇用形態を変えることも選択肢のひとつではありますが、収入や社会保険の扱いが変わります。正社員からパートにした場合の収入・社保・年金の変化は、検討する前に数字で確かめておくことをおすすめします。
配慮と不利益取扱いの境目|記録しておくことと相談先
「時短だから」という理由で仕事を外されたとき、それが配慮なのか、それとも問題のある扱いなのか。この線引きは、当事者ほど判断が難しくなります。
前提として、評価が下がったことがそのまま違法になるわけではありません。実際に働かなかった時間に対応して賃金が下がることまで、一律に禁じられているわけではないからです。一方で、育児のための短時間勤務制度を利用したこと自体を理由として、降格や不利益な人事評価を行うことは、育児・介護休業法上の不利益な取扱いにあたる可能性があります。どちらにあたるかは、制度の利用を理由としているのか、実際の成果や合理的な評価基準に対応した扱いなのかによって変わり、個別の事情で判断が分かれます。
先ほどの矢島氏の報告では、子育て中の社員に対して「こういうことはできないのではないか」という過剰な配慮が行われやすいこと、同じ子育て中の正社員女性であっても対応できる仕事の範囲は方によって異なるため、決めつけずに、ひとりずつ状況を把握して業務を割り当てることが大切だと指摘されています。悪意がなくても、確認されないまま仕事が減っていくことは起こりうるということです。
だからこそ、「時短だからですか」と聞くより、「今回の役割変更の理由を教えてください」と事実を尋ねるほうが実務的です。業務再編、本人の実績、部署の事情など、別の理由があることも十分にあります。
気になるときに残しておく記録
もし扱いに疑問が残る場合は、感情ではなく事実を残します。
いつ、誰から、どのような説明があったか。制度を利用する前と後で、担当業務・給与・評価がどう変わったか。この2点をメモしておくだけで、後から人事に相談するときの説明が変わります。
社内で解決しない場合の相談先は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。育児・介護休業法に関する相談を受け付けている公的な窓口で、費用はかかりません。相談したからといって、すぐに会社と争う手続きに進むわけではなく、まず状況を聞いてもらう場として使えます。
MOREARIAでは、働き方を変えながらキャリアを続けてきた女性たちのインタビューを掲載しています。順調に進んだ話だけではなく、迷いながら選び直してきた物語が、今のあなたのヒントになるはずです。
時短勤務のキャリアに関するよくある質問
最後に、時短勤務とキャリアについて多く寄せられる疑問をまとめました。
時短勤務をしていると、昇進はできないのでしょうか?
制度上できないと決まっているわけではありません。確認したいのは、等級要件に「大型案件の主担当経験」などの具体的な条件があるか、そしてそれが今の勤務時間で取得できるかどうかです。要件が曖昧なまま「時期が来たら」と言われ続けている場合は、必要な経験を具体的に聞くところから始めてみてください。
3歳を過ぎたら、会社には何の義務もなくなるのでしょうか?
いいえ。2025年10月以降、3歳から小学校就学前の子どもを養育する方については、事業主が5つの措置から2つ以上を用意する義務があります。ただし、その2つに短時間勤務が含まれるとは限らないため、自社が何を選んだかの確認が必要です。
時短のまま数年過ごすと、経験が積めないままになりませんか?
時間の長さより、任される仕事の中身で決まる部分が大きくなります。1年に1つでも、後から職務経歴として説明できる経験、たとえば特定領域の担当や業務の改善、新人の育成などを残せているかを、半年ごとに振り返ってみてください。
まとめ|時短勤務のキャリア不安は、確かめられるところから減らせる
時短勤務のキャリア不安は、漠然としているうちは大きく見えます。制度の期限、収入の変化、評価の基準、仕事の中身。ひとつずつ確かめていくと、不安のうち「事実を知らなかっただけの部分」がかなりの割合を占めていることに気づきます。最後に、この記事の要点を振り返っておきましょう。
法定の短時間勤務は3歳未満まで。3歳から就学前は会社が選んだ2つ以上の措置から選択する
時短制度がある事業所の57.7%は、小学校就学前で利用期間が終わる設計になっている
評価は「時間の量」か「成果」か、目標値が調整されているかまで確認する
フルタイム復帰は、物理的に可能か・続けられるか・キャリアが変わるかの3段階で判断する
今日できることは、就業規則を開いて育児関係の条文を探すことだけでも十分です。次の面談で聞くことを1つ決めておくだけでも構いません。確かめた事実がひとつ増えるたびに、選べる範囲は少しずつ広がっていきます。あなたの歩幅で進む一歩を、応援しています。
参考資料
- 株式会社マイナビ「育児離職と仕事と育児の両立の男女差実態調査(2026)」(2026年5月15日)
- 厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」
- 独立行政法人労働政策研究・研修機構 第137回労働政策フォーラム 研究報告1「子育て期の柔軟な働き方とキャリア形成支援」(2025年)
SUPERVISED BY
akina
時短勤務でキャリアに不安を感じたら、制度の期限や職場での評価、今後の働き方を具体的に確認することが大切です。
MOREARIA編集長。「やりたいことはあるけど、踏み出せない」女性に向けて、挑戦する人たちのリアルな物語と、自分らしい一歩を考えるきっかけを届けるメディアを運営。マーケティング支援事業や実践型スクール「MOREARIA LAB」も展開している。
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