この記事でわかること
- 「資格を取れば選ばれる」と感じたとき、実際に何を求めているのか
- 資格に期待していることを4つに分けて確かめる方法
- 名乗る許可と、仕事ができることの違い
- 分けたあと、取るか取らないかを自分で決めるための手順
フリーランスとしてやっていくと決めたあと、なぜか最初に検索してしまうのが「資格」だったりします。まだ何の仕事を受けるかも固まっていないのに、資格の一覧ページを開いている。そういう時間の使い方に、心当たりのある方もいるかもしれません。
そこには、情報を集めたい気持ちだけでなく、不安を具体的なものに置き換えたい気持ちが混ざっていることもあります。資格は、やることがはっきりしていて、終わりがあって、形に残ります。先の見えないものを前にしたとき、そこに手が伸びるのは自然なことです。
この記事では、おすすめの資格をご紹介しません。代わりに、あなたが資格に何を解決してほしいと思っているのかを、4つに分けて確かめます。分けてみると、資格で解けるものと、資格では解けないものがはっきりします。取るか取らないかは、そのあとで決めれば十分です。
「資格を取れば選ばれる」と思ったとき、何が起きているか
質問サイトには、こういう相談が寄せられています。23歳の女性が、アルバイトをしながら将来は完全にフリーランスとして働きたいと考えている。けれど何から始めればいいのか、どんな仕事があるのか、どんな資格を取ればいいのかが分からない。そう書かれていました。
この短い相談文のなかに、実は3つの別々の問いが混ざっています。働き方をどうするか、どの仕事をするか、資格をどうするか。この3つは本来、順番に決まっていくものです。それが同時に来ているから、動けなくなっています。
そして多くの場合、いちばん答えの出しやすい「資格」から手をつけようとします。ほかの2つに比べて、選択肢が具体的で、調べれば出てくるからです。
けれど資格を先に決めても、残りの2つは決まりません。だから、調べても調べても落ち着かない。ここを抜けるには、資格を探す手を一度止めて、自分は資格に何をしてほしいのかを言葉にしてみるのが早道です。
この記事では、その整理のために4つの視点に分けて考えます。心理学の研究にもとづく分類ではなく、編集部が用意した思考の枠組みです。あくまで自分の状態を言葉にするための道具として使ってください。
- 01
名乗る許可が欲しい
資格がないまま「〇〇です」と名乗ってよいのか分からない。肩書きを持つことへの後ろめたさを、資格で消したいと感じている状態です。
- 02
実績の代わりが欲しい
まだ納品した仕事がない。何を根拠に選んでもらえばいいのか分からないので、資格証で空白を埋めたいと考えています。
- 03
値付けの根拠が欲しい
会社の給与表がなくなり、自分でいくらと言わなければならない。その金額を口にする理由として、資格を持っておきたいと感じています。
- 04
将来の不安を、資格名に置き換えている
仕事が途切れたらどうしよう、という漠然とした不安が先にあり、それを「需要のありそうな資格」という具体的な形に変換しています。
4つとも、資格が欲しいという同じ言葉になります。けれど中身はまったく違います。そして、資格で解けるのはこのうち一部だけです。
資格に何を期待しているのか、4つに分けてみる
ひとつずつ、確かめる問いを添えて見ていきます。ご自身に当てはまるものが複数あっても構いません。多くの場合、いくつかが重なっています。
名乗る許可が欲しいのか
ここには、はっきりした分かれ目があります。法律の話です。
厚生労働省は、国家資格を法律上の規制の種類によって分類しています。有資格者以外がその業務に携わることを禁じられている業務独占資格、有資格者以外はその名称を名乗ることを認められていない名称独占資格。このほかに、技能の程度を検定する技能検定と、特定の事業を行う際に法律で設置が義務づけられている設置義務資格があります。
ここで気をつけたいのは、名乗ることに制限がかかるのは、名称独占資格だけではないという点です。技能検定についても、職業能力開発促進法で、技能士でない者は技能士という名称を用いてはならないと定められています。たとえばファイナンシャル・プランニング技能士は、この技能検定にあたります。
一方で、ライター、デザイナー、マーケター、コーチといった一般的な呼び名については、通常、それを名乗るための国家資格は必要ありません。こうした呼び名は、法律が管理しているものではないからです。ただし上のとおり分類は複数あるので、ご自身が使おうとしている肩書きについては、根拠となる法律や所管する官公庁の情報を一度確かめておくと安心です。分類の全体像は、厚生労働省がまとめた国家資格の分類で確認できます。
ですので、確かめる問いはこうなります。あなたがやりたい仕事は、法律上その資格がないと名乗れない、あるいは業務ができない仕事でしょうか。それとも、名乗ってよいという自信のほうが欲しいのでしょうか。
前者なら、迷う段階はもう終わっています。その業務を行うために法律上必要な資格や登録の要件を満たす必要があります。要件の満たし方は資格ごとに違うので、所管している官公庁のページで確認してください。後者なら、資格を取っても自信が生まれるとは限りません。自信は、名乗ったあとに仕事をして、少しずつ後からついてくるもののように思います。
実績の代わりが欲しいのか
資格を考えるときに起こりやすいのが、この形です。実績がゼロの状態で、何を見せればいいのか分からない。その空白が落ち着かないので、埋められるものを探しています。
気持ちとしてはとてもよく分かります。ただ、ここで確かめておきたいことがあります。あなたが応募したい案件では、資格と実務経験のどちらが必須の欄に書かれているでしょうか。
募集要項を開くと、資格と実務経験は別々の条件として並んでいることがあります。両方が必須になっている場合、資格を取っても実務経験の欄は埋まりません。逆に、資格が歓迎の欄にあって実務経験が必須なら、先に埋めるべきものは資格ではないということになります。
これは、資格に意味がないという話ではありません。資格が実績の代わりになるかどうかは、あなたが思うことではなく、募集要項に書かれていることだという話です。想像で決めずに、実際の案件を数件開いて確かめてみてください。
もちろん、選考で見られていることのすべてが募集要項に書かれているとは限りません。ただ、応募する前にあなたが確かめられる材料としては、募集要項がいちばん確かです。
値付けの根拠が欲しいのか
会社員だったころは、金額を自分で決める必要がありませんでした。独立すると、そこが自分に返ってきます。「この金額をいただきます」と言う場面が、想像以上に重い。
そのとき、資格があれば言いやすくなる気がします。「〇〇を持っているので」と前置きができるからです。
ここについて、正直にお伝えしておきたいことがあります。資格を取ることで報酬がどう変わるかを直接測定した公的な調査を、この記事の執筆時点では確認できませんでした。ですので、上がるとも上がらないとも申し上げられません。
分けて考えたいのは、この2つです。資格を「この金額を言ってよい」という自分への許可として使いたいのか。それとも、相手が実際にその資格に対してお金を払うと期待しているのか。
前者は、あなたの内側の問題です。資格で解決することもあれば、しないこともあります。後者は相手のいる話なので、募集要項や過去のやりとりを見て確かめるしかありません。この2つを混ぜたまま資格を取ると、取ったあとに「思ったほど変わらなかった」となりやすいように思います。値付けそのもので迷っている場合は、フリーランスの収入が不安なときに確かめることもあわせてご覧ください。
将来の不安を、資格名に置き換えていないか
4つのなかでも、自分では気づきにくいことがあるのがこれです。
質問サイトには、40代以降も長く続けられる仕事をしたいという理由で資格を検討している女性の相談もありました。挙げていた候補は、専門的であること、信頼があること、年齢を重ねても続けられそうであること、という観点で選ばれていました。なお、この方の当面の目的は資格を取ったあとの再就職で、独立を決めた方の声ではありません。それでも、資格に何を託しているかという構造はよく表れています。
「資格が欲しい」と感じたとき、その下にあるのは、案件が途切れることへの不安だったり、専門家として認められたい気持ちだったり、軸がないという感覚だったりします。それぞれ別の悩みなのに、資格という一語にまとめられてしまう。
確かめる問いはこうです。その資格を取ったあと、あなたの何が変わってほしいのでしょうか。変わってほしいことを一文で書けるなら、それが本当の課題です。書けないなら、まだ課題が言葉になっていないということかもしれません。独立そのものへの不安が大きい段階なら、フリーランスになりたいけれど不安があるときの考え方を先に読んでいただくほうが、順番として自然かもしれません。
分けたあと、どう決めるか
4つに分けたら、決める順番があります。難しいことはしません。紙かメモアプリに、5行書くだけです。
- 01やりたい仕事を、業務名まで絞って1行で書く
- 024つのうち、自分に当てはまるものに印をつける
- 03その仕事が、法律で資格を必要とするものかを確かめる
- 04実際の案件を数件開き、資格がどこに書かれているかを見る
- 05「資格を取ったら何が変わってほしいか」を一文で書く
HINT
5行目を、声に出して読んでみる
「資格を取ったら、〇〇が変わってほしい」。この一文を書いて、読み上げてみてください。読んだときに自分でしっくりこないなら、その〇〇はまだ本当の課題ではないのかもしれません。書き直せるまで、資格の申し込みは待ってみてもいいと思います。
決まらなくても、それは失敗ではありません
5行書いても、答えが出ないことがあります。むしろ、それが普通かもしれません。
資格を探しているとき、私たちは「決めれば楽になる」と思っています。けれど実際には、決めたあとにやることが始まるだけです。だから、決まらないまま調べ続けてしまう。それは怠けているのではなく、まだ材料がそろっていないというだけのことです。
そういうときは、4番目だけやってみてください。実際の案件を数件開いて読むだけなら、それほど長い時間は必要ありません。頭のなかで考え続けるより、書かれているものを読むほうが、たいてい早く進みます。
そして、確かめたうえで取ると決めたなら、それは迷って取るのとはまったく違います。会社員として働きながら準備を進める場合の考え方は、働きながら資格取得を目指すときの選び方で別途まとめています。
MOREARIAでは、自分の働き方を自分で決めていった女性たちのインタビューを掲載しています。最初から答えを持っていた人ではなく、迷いながら順番を組み替えて進んだ人たちの物語が、あなたの判断のヒントになるはずです。
女性フリーランスの資格に関するよくある質問
資格を取るか迷っているときに寄せられる疑問を、3つ整理しました。
4つのうち、複数当てはまってしまいます。どうすればいいですか?
複数当てはまるのが普通です。分けることの目的は、ひとつに絞ることではなく、資格で解けるものとそうでないものを見分けることにあります。4つのうち法律で決まっているものが含まれていれば、そこが最優先です。含まれていなければ、実際の案件に書かれている条件を先に確かめてみてください。
結局、資格は取らないほうがいいということですか?
いいえ、そういう記事ではありません。この記事がお伝えしたいのは、取るか取らないかを決める前に、自分が資格に何を期待しているのかを言葉にしておくと、取ったあとの落差が小さくなるということです。確かめたうえで取ると決めたなら、それは十分な理由になります。
実績がないうちは、何も名乗れないのでしょうか?
法律で名称の使用が制限されている資格を除けば、名乗ること自体に許可は要りません。ただ、名乗ることと選ばれることは別です。選考で見られていることのすべてが公開されているわけではありませんが、応募する前に確かめられる条件は、あなたが受けたい案件の募集要項に書かれています。名乗ってよいかを悩むより、そこを読むほうが早く進みます。
まとめ|資格が欲しいと感じたら、まず4つに分けてみる
「資格を取れば選ばれる」という言葉のなかには、まったく別の4つの願いが混ざっています。分けてみると、いま手をつけるべきものが見えてきます。
名乗る許可が欲しいのか。法律で名称や業務が制限されている資格かどうかで、答えが変わります
実績の代わりが欲しいのか。資格と実務経験のどちらが必須になっているかは、応募前に募集要項で確かめられます
値付けの根拠が欲しいのか。自分への許可として欲しいのか、相手が払うと期待しているのかを分けてください
将来の不安を資格名に置き換えていないか。取ったあと何が変わってほしいのかを、一文で書いてみてください
資格を探している時間は、無駄ではありません。何かをしたいと思っているからこそ、調べているのだと思います。ただ今日は、資格の一覧を閉じて、5行のメモを書くほうに時間を使ってみてください。1行目に、やりたい仕事の名前を書くところから始められます。あなたの心地よい一歩を、応援しています。
参考資料
- 厚生労働省「既存の国家資格の概要(参考資料2)」
- 職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)第50条
- Yahoo!知恵袋 投稿(投稿本文で年代・性別が確認できたものを参照)
SUPERVISED BY
akina
MOREARIA 代表 / 編集長
MOREARIA編集長。「やりたいことはあるけど、踏み出せない」女性に向けて、挑戦する人たちのリアルな物語と、自分らしい一歩を考えるきっかけを届けるメディアを運営。マーケティング支援事業や実践型スクール「MOREARIA LAB」も展開している。
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