この記事でわかること
- 2026年の調査データが示す、AIスキルと採用の実際の関係
- 求人票のAI要件を3段階で読み分ける方法
- 「使ったことがある」を職務経歴書の実績に変える手順
- 面接で数字の根拠を聞かれたときの答え方
求人票を眺めていて、「生成AI活用経験」という一行を見つけて、そっと画面を閉じた。そんな経験はありませんか。事務や営業として働いてきた方ほど、この言葉に置いていかれる感覚を持ちやすいものです。
先に結論をお伝えします。AIが使えないから転職できない、と一律に言えるデータは見当たりません。変わったのは「必須条件」ではなく、企業が候補者のどこを見ているかです。
この記事では、2026年の調査をもとに、求人票の読み方、実績の作り方、職務経歴書への書き方、面接での答え方までを順番に整理します。今の職種を続けたまま、できることから始められます。
2026年、AIスキルは転職の必須条件になったのか
結論から言うと、すべての職種でAIスキルが必須になったことを示すデータは確認できません。ただし、企業が中途採用で求める人物像そのものは、確かに動き始めています。
as of 2026.08
最新データの状況
- パーソルキャリアの2026年2月調査(従業員501人以上でAIツールを導入・活用している企業の人事・採用担当者515人)では、中途採用で求める人材像が「大きく変わった」22.1%、「一部変わった」53.0%で、合計75.1%
- パーソル総合研究所の2026年5月調査(正規雇用者3,300人)では、正規雇用者の生成AI業務利用率は54.3%。2025年10月の41.9%から12.4ポイント増加
- マイナビ転職の2026年4月調査(直近1年以内に転職した正社員700人)では、生成AIを「活用している」は46.7%。20代53.7%、30代61.7%に対し、40代・50代は約3割
まず、75.1%という数字の読み方に注意が必要です。この調査の対象は、従業員501人以上で、すでにAIツールを導入・活用している企業に限られています。日本企業全体の話ではありません。
そのうえで、この設問が聞いているのは「AIスキルの要求水準が上がったか」ではなく、「求める人物像が変わったか」です。ここは似ているようで、意味がかなり違います。
同調査を発表したdodaの編集長は、転職希望者はAIツールを使えるかどうかだけでなく、AIを活用したうえでどのような実績を残せたかが、これまで以上に問われていくと述べています。調査からも、ツールの操作そのものより、業務成果につなげた経験が見られる方向がうかがえます。
生成AIは、すでに一部の職種だけのものではない
正規雇用者の54.3%、直近の転職者の46.7%という数字は、AIがITエンジニアだけの話ではなくなっていることを示しています。特に30代の転職者では61.7%と、半数を超えています。
同じマイナビ転職の調査では、生成AIの用途として「メール作成」がトップで、「報告書作成」「情報収集・要約」が続いています。専門的な開発ではなく、日々の事務作業がそのまま対象になっているということです。
つまり、あなたが今やっている仕事の中に、すでにAIを試せる場所がある可能性は高いのです。何を学ぶかを決める前に、まず今の業務を見直すほうが近道になります。学ぶ分野そのものから考えたい場合は、30代女性の学び直しを分野別に整理した記事も参考にしてください。
求人票のAI要件は、3つのレベルに分かれる
求人票を読むときは、「AI」という単語があるかどうかではなく、その前後にある動詞を見てください。同じAI関連の記載でも、求められている水準はまったく違います。
ここでは3段階に整理します。これは調査結果ではなく、実際の求人票の書かれ方をもとにした編集部独自の整理です。境界は企業や職種によって変わるため、あくまで一般的な読み分けの目安として使ってください。
レベル1・歓迎要件|使ったことがあれば応募できる
このレベルの求人票には、次のような書き方が並びます。
生成AIツールの利用経験をお持ちの方歓迎
ChatGPT、Copilot等に抵抗がない方
新しいITツールを積極的に活用できる方
見分ける手がかりは、「歓迎」「尚可」「利用経験」「興味」といった言葉です。ここには、大規模な導入実績までは求められていません。日常業務や個人的な利用でAIに触れた経験があれば、応募を検討できる範囲です。
このレベルの求人が多いなら、慌てて講座に申し込む必要はありません。今できることを整理するほうが優先です。
レベル2・業務実績要件|「何を改善したか」が要る
一方、次のような書き方が出てきたら、水準が一段上がります。
生成AIを活用した業務改善経験
AIツールの導入・運用経験
生成AIを用いた業務プロセス改善
社内への生成AI活用推進経験
判断の手がかりは、「実務経験」「改善」「実績」「導入」「運用」「推進」です。ここでは「使えます」では足りず、どの業務に使い、何がどう変わったかを説明できる必要があります。
逆に言えば、この説明ができる状態を作れば、レベル2の求人にも手が届きます。その作り方は次の章で扱います。
レベル3・実質エンジニア要件|別の市場だと考える
次のような言葉が並ぶ求人は、非IT職の方が目指す先とは別の市場だと考えたほうが安全です。
Pythonを用いたLLMアプリケーション開発経験
RAGの設計・構築経験
機械学習モデルの開発・評価経験
AWS/Azure/GCP上でのAIシステム構築
これらは、AIを作る側・組み込む側の技術職に近い求人です。求人検索で「AI」と入れると同じ一覧に並んでしまうため、混同しやすいところです。
応募して落ち続けると自信を失いますが、それは能力の問題ではなく、市場が違うだけです。もしIT分野そのものに関心があるなら、エンジニア以外の選択肢も含めて考えられます。未経験からITスキルを学ぶ道筋についての記事で詳しく扱っています。
「使ったことがある」を実績に変える4つのステップ
ここからが本題です。AIを触った経験を、選考で評価される形に変えていきます。ポイントは、ツールではなく業務から始めることです。
- 01
業務を分解して、狙いを1つ決める
今の仕事を作業単位に分けます。返信メールの作成、議事録づくり、データ整理、資料のたたき台。そのうえで、頻度が高く、時間がかかり、ある程度型が決まっていて、社内規定上AIを使ってよい業務を1つ選びます。狙いは、成果が測りやすい場所を先に押さえることです。
- 02
改善前の状態を測る
AIを使う前に、今の状態を記録します。1件あたり何分か、週に何件あるか、修正は何回入るか。3回から5回は測ってください。この記録がないと、あとから「速くなった気がする」としか言えなくなります。狙いは、比較できる基準を持つことです。
- 03
会社が許可した範囲でAIを使う
実際に試します。このとき、どんな指示を出したか、どこを任せてどこを自分で判断したかをメモに残します。狙いは、面接で工程を説明できる状態にしておくことです。
- 04
確認工程を含めて測り直す
ここが最も見落とされます。AIの出力に5分、内容の確認に10分かかったなら、合計15分で比較してください。生成時間だけを取り出すと、実態より大きな数字になり、面接で崩れます。狙いは、自分で守れる数字にすることです。
測り終えたら、月単位に換算しておくと伝わりやすくなります。たとえば1件30分が18分になり、その業務が月に40件あるなら、12分×40件で月480分、およそ8時間の削減です。1件あたりの数分は小さく見えても、月に直すと業務量として伝わります。この換算まで済ませておくと、面接で「規模感は」と聞かれたときにも詰まりません。
職務経歴書|弱い書き方と、強い書き方
同じ経験でも、書き方で伝わり方が変わります。弱い例は、「ChatGPT、Gemini、Copilotを業務で使用できます」。これはツール名の列挙で、何ができる方なのかが伝わりません。
中間の例は、「ChatGPTを用いて議事録作成を効率化しました」。方向は合っていますが、どれだけ変わったのかが分かりません。強い例は、こうなります。
週3回発生する会議議事録について、生成AIによる要点抽出と本人確認を組み合わせた作成手順を整備。1回あたり平均40分から約22分に短縮。最終確認では原文と照合し、固有名詞と数値の誤記を防止。
違いは、業務、工夫、成果、そして確認工程まで書かれていることです。特に最後の一行があると、AIに任せきりにしていない方だと伝わります。
もう1つ、置き場所にも注意してください。AI関連の記載をスキル欄だけに閉じ込めると、ツール名の一覧になってしまいます。職務経歴の本文に、担当業務の説明として書き込むほうが、何の仕事に使える方なのかが伝わります。スキル欄には、実際に使ったツール名を数点だけ添える程度で十分です。
面接|想定される5つの質問
書類に書いた数字は、面接で必ず掘られると考えてください。次の5問に答えを用意しておくと安心です。
なぜその業務にAIを使おうと思ったのですか
具体的にどこを任せて、どこをご自身で判断しましたか
AIが間違えたときはどうしましたか
その削減時間はどうやって測りましたか
弊社でも同じことができそうですか
最後の質問が、実は最も大事です。ここで答えられると、たまたまうまくいった話ではなく、持ち運べる力として受け取ってもらえます。
なお、この5問に答えられない経験は、職務経歴書で強く押し出さないという判断もできます。書ける実績が1件でもあれば、そちらを厚く書くほうが結果につながります。
つまずきやすい3つのケース
ここまでの手順が、そのまま使えない状況もあります。よくある3つを、対処法とあわせて取り上げます。
職場でAIの利用が禁止・制限されている
まず大前提として、会社のルールを破って実績を作ることは避けてください。顧客情報や社内資料を無断で外部のAIサービスに入力するのは、転職以前の問題になります。
代わりに、次の順で検討します。会社が許可している機能だけを使う。公開情報だけを扱う業務で許可を取る。匿名化したサンプルで手順を再現する。
このときは、職務経歴書にも事実のまま書きます。たとえば「社内規定により実データの外部AI利用が制限されていたため、公開情報を用いた検証環境で手順を設計」といった形です。適切に説明できれば、むしろ情報管理を理解している方だと伝わる材料になります。
学習時間がまとまって取れない
育児や介護で、机に向かう時間が細切れになる方は少なくありません。ただ、転職のための実績づくりという目的なら、勉強時間の確保にこだわらなくても進められます。
「AIを50時間勉強した」よりも、「毎週やっている業務を月に何時間か短縮した」のほうが、職務と結びつけて説明しやすいからです。前者は学習の記録、後者は仕事の記録です。職務との結びつきを示すなら、後者のほうが伝わりやすくなります。
資格や講座だけが増えていく
もう1つ、よくあるつまずきです。講座を受け、修了証をもらい、また次の講座へ。半年後に、学んだことは増えたのに、仕事で何を変えたかは語れない状態になります。
資格が悪いのではありません。学んだことと、企業が知りたい「入社後に使えるか」の間に、証拠がないことが問題です。
新しい講座に申し込む前に、1つだけ確認してみてください。「これを修了したら、職務経歴書に新しく何という一行を書けるようになるか」。答えが「講座修了」だけなら、次の講座より、今ある学びを1件の実績に変えるほうが先です。
なお、公的な支援制度を使いたい場合は、経済産業省のリスキリングを通じたキャリアアップ支援事業があります。在職中で転職を目指す方が対象で、講座を修了すると受講費用の2分の1相当(上限40万円)、その後に転職して1年間継続就業すると、さらに5分の1相当(上限16万円)が補助される仕組みです。制度の選び方や他の支援策とあわせて検討したい方は、リスキリングの分野選びと支援制度をまとめた記事もご覧ください。
MOREARIAでは、キャリアの転機に立った女性たちのインタビューを掲載しています。順調に進んだ方ばかりではありません。迷いながら、手元にあるものを少しずつ形にしていった物語のほうが、次の一歩を考えるヒントになるはずです。
AIスキルと転職に関するよくある質問
最後に、寄せられやすい疑問を3つ取り上げます。迷いやすいところなので、判断の材料にしてください。
AI関連の資格は、転職で有利になりますか?
資格そのものが不利になることはありませんが、それだけで評価が決まるわけではありません。選考で問われるのは「入社後に何ができるか」なので、資格に加えて、実際の業務で何を変えたかを1件でも示せると強くなります。資格は説明材料の1つと考えてください。
職務経歴書を生成AIで作成してもよいのでしょうか?
下書きに使うこと自体は問題ありませんが、そのまま提出するのは避けたほうが安全です。マイナビ転職の2026年4月調査(直近1年以内に転職した正社員700人)では、履歴書やエントリーシートの作成に生成AIを使うことを「ポジティブ」と捉えた方は37.0%にとどまりました。転職を経験した方自身が慎重だという結果です。書いた内容は、必ず自分の言葉で説明できる状態にしておいてください。
面接で家庭の事情について聞かれた場合はどうすればよいですか?
厚生労働省は、公正な採用選考の基本として、本人のもつ適性・能力以外のことを採用基準にしないことを挙げており、家族に関することは「就職差別につながるおそれがある14事項」に含まれています。答えにくいと感じたら、「募集要項に記載の勤務条件には対応できます」というように、仕事上の可否に戻して答える方法があります。気になる場合は、お近くのハローワークに相談できます。
採用選考の考え方については、厚生労働省の公正な採用選考に関するQ&Aで確認できます。
まとめ|AIスキルは、今の仕事の中から作れる
AIスキルが転職の必須条件になったわけではありません。変わったのは、企業が見ている場所です。最後に、この記事の要点を振り返っておきましょう。
2026年の調査が示すのは「AIの必須化」ではなく、企業が求める人物像の変化
求人票のAI要件は、歓迎・業務実績・実質エンジニアの3段階に分かれる
評価されるのは、業務・工夫・成果・確認工程まで説明できる経験
実績は新しい学習からではなく、今やっている業務から1件作れる
まずは、今週くり返している仕事を1つ選んで、かかっている時間を測ってみる。それだけでも、職務経歴書に書ける一行に近づく確かな前進です。あなたの歩幅で進んでいけば大丈夫です。
この記事で参照した調査・資料
- パーソルキャリア「企業のAI活用実態と人材戦略に関する調査」(2026年2月/n=515)
- パーソル総合研究所「AI環境における人材とマネジメントに関する定量調査」(2026年5月/正規雇用者n=3,300)
- マイナビ転職「転職者の生成AI活用に関する実態調査」(2026年4月/n=700)
- 経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」
- 厚生労働省「公正な採用選考をめざして」
SUPERVISED BY
akina
MOREARIA Inc. 代表 / MOREARIA編集長
MOREARIA編集長。「やりたいことはあるけど、踏み出せない」女性に向けて、挑戦する人たちのリアルな物語と、自分らしい一歩を考えるきっかけを届けるメディアを運営。マーケティング支援事業や実践型スクール「MOREARIA LAB」も展開している。
Morearia
挑戦する女性たちの、隣に。
MOREARIAは、「挑戦する女性たちの次の一歩」に寄り添うウェブメディアです。あなたの一歩が、誰かの次の一歩になるかもしれません。
まずはご相談くださいフォームでのお問い合わせはこちらMOREARIAへの掲載費用はかかりますか?
掲載にあたっては、まずお気軽にお問い合わせください。費用やご協力内容については、個別にご相談のうえご案内しております。
取材やインタビューに興味がありますが、どこから連絡すればいいですか?
お問い合わせページよりご連絡ください。まずはお気軽にご相談いただけます。
記事に登場する方は、どのような方ですか?
キャリアや働き方、起業など、自分らしい選択をしてきた女性を中心にご紹介しています。特別な肩書きや実績よりも、リアルなストーリーを大切にしています。
Follow Us
フォローする














