この記事でわかること
- 無料のキャリア相談が4種類に分かれる理由と、それぞれの費用の負担者
- 負担者が違うと、相談の終わり方がどう変わるのか
- 転職を決めていない段階で、どこに相談すると話が噛み合うのか
- いま自分に必要なのが相談なのか、それとも別のことなのかの見分け方
女性が無料でキャリア相談を受けられる場所は、探せば見つかります。国の窓口、勤務先の制度、転職エージェント、有料サービスの無料体験。どれも費用はかかりません。それでも予約先を決めきれないのは、選択肢が足りないからではなく、同じ「無料」の中身が1種類ではないからです。
この記事では、無料を4つに分けます。分ける基準は、サービスの良し悪しではありません。その相談の費用を、誰が払っているかです。払っている人が違えば、相談が向かう先も変わります。
読み終えたとき、いま自分に必要なのが「頭の整理」「求人情報」「継続的な支援」「事実確認」のどれなのかを1つ選び、それに合う相談先を決めた状態になります。相談しないという選択肢も、この4つの中に入れてあります。
無料なら相談したい人は56.0%、有料でも相談したい人は1.9%
「無料で探すなんて、自分がケチなのだろうか」と感じる必要はありません。数字を見ると、それが多数派だとわかります。
無料か有料かで、希望する人の数が約30倍違う
厚生労働省の令和7年度「能力開発基本調査」(個人調査・調査対象20,127人)で、キャリアコンサルタントによる相談を利用したいかを正社員に聞いた結果があります。
| 回答 | 割合 |
|---|---|
| 費用を負担することなく、社内で利用できるなら利用したい | 33.4% |
| 費用を負担することなく、社外で利用できるなら利用したい | 22.6% |
| 社外で、費用を負担してでも利用したい | 1.9% |
| 利用するつもりはない | 24.4% |
無料であれば利用したいと答えた人は、社内と社外を合わせて56.0%。一方、費用を負担してでも利用したいと答えた人は1.9%でした。その差は約30倍です。なお厚生労働省は、有料も含めた「利用したい」の合計を57.9%として集計しています。無料を条件とする2項目を取り出して合算したのは編集部です。
先に断っておくと、この調査の数値は女性のみを対象にした集計ではなく、正社員全体の結果です。この記事で扱う数字はすべて、女性に限定した統計ではありません。
つまり「無料で相談したい」という探し方は、節約志向の例外ではありません。相談を希望する人の大半が立っている位置です。
受けたい人は多いのに、実際に受けた人は14.8%
同じ調査で、令和6年度に実際にキャリアコンサルティングを受けた正社員は14.8%、労働者全体では12.1%でした。
無料なら利用したい人が56.0%いるのに対し、実際に受けた人は14.8%。意向と実績のあいだに開きがあります。
ただし、この調査が測っているのは意向と利用実績までです。開きが生まれた理由が、窓口を知らないからなのか、予約の手間なのか、途中で必要がなくなったからなのかは、この数字からは特定できません。この調査から分かるのは、無料での利用意向の割合が、実際の利用実績を大きく上回っているというところまでです。
相談先は、いまのところ職場に偏っている
同じ調査で、キャリアに関する主な相談先を正社員に聞いた結果(複数回答・3つまで)では、職場の上司・管理者が69.5%で最も多く、企業内の人事部が18.2%と続きます。企業外の機関等は13.1%でした。
相談先の中心が職場にあるということです。ただ、上司に話せば、その内容は評価や配置の判断材料になり得ます。転職を検討していることを最初に相談する先としては、選びにくい場面もあります。
社外の窓口は13.1%にとどまっています。理由がどこにあるのかは、この調査からは分かりません。ただ、選択肢として並べて比べたことがないのであれば、そこから始める余地はあります。ここからは、社外の窓口を含めて4つに分けます。
その無料は、誰が払っているのか
無料相談は、誰もお金を払っていないわけではありません。相談する本人以外の誰かが負担しているか、事業者が自社のコストとして負担しています。負担者ごとに4つに分けます。
- 01
厚労省の無料キャリアコンサルティング|国の事業費
厚生労働省の委託事業として運営されているキャリア形成・リスキリング相談コーナーです。相談する本人との契約も、特定企業への採用成立も、収益になりません。この事業のキャリアコンサルティングでは職業紹介を行わないことが明記されています。都道府県や市区町村が予算を出している女性向けの就業支援窓口も、費用の負担者という観点では同じ側に分類できます。ただし求人紹介の有無や支援内容は窓口ごとに異なるため、そこは個別に確認します。
- 02
社内相談|勤務先
勤務先が制度として設けているキャリア相談です。費用は会社が負担しています。会社が費用を出す目的は、定着や配置の最適化、能力開発など制度ごとに置かれています。
- 03
転職エージェント|求人企業
有料職業紹介事業者は、職業安定法第32条の3第2項により、求職者から手数料を徴収することが原則として禁じられています。費用は採用する企業側が負担する仕組みです。
- 04
有料サービスの無料体験|事業者の販促費
有料のキャリアコーチングなどが、初回を無料にしているものです。無料相談にかかる費用は、事業者が販促や顧客獲得のためのコストとして負担しています。
HINT
予約する前に、負担者を1つ確かめる
いま候補にしている窓口は、4つのどれでしょうか。サイトの運営者情報を見て、国や自治体の事業なのか、求人を扱う会社なのか、有料プランを持つ会社なのかを確認します。ここが分かるだけで、当日の話の進み方が予測できます。
どれが中立で、どれが良くない、という話ではありません。事業として成り立つ仕組みが違うので、相談のあとに提示できる選択肢が変わる。それだけのことです。
負担者が違うと、話の着地点が変わる
4つの窓口は、相談の終わり方が構造的に異なります。同じ悩みを持ち込んでも、出てくる次の一手が変わります。
| 類型 | 費用の負担者 | 出やすい次の一手 |
|---|---|---|
| 厚労省の相談コーナー | 国の事業費 | 現状整理、キャリアプラン、学び直しの検討 |
| 社内相談 | 勤務先 | 社内での異動、役割の変更、制度の利用 |
| 転職エージェント | 求人企業 | 求人の確認、応募、選考 |
| 有料サービスの無料体験 | 事業者の販促費 | 継続支援が必要かの判断、有料プランの検討 |
転職エージェントは、求人を出せるからこそ求人が出る
転職エージェントに相談すると求人の話になりやすいのは、担当者が強引だからではありません。求人を紹介することがその事業そのものだからです。
裏を返せば、応募できる求人や年収の相場を具体的に知りたいときには、有力な選択肢になります。この記事の4類型のうち、外部の求人を紹介することを主なサービスにしているのが転職エージェントです。
問題になるのは、まだ転職すると決めていないのに、ここから入ってしまう場合です。その場合は最初に「今日は求人を見るためではなく、転職すべき段階かを整理したい」と伝えます。目的を共有しておけば、話の方向は変わります。使い方そのものを知りたい場合は、女性の転職エージェントの使い方にまとめてあります。
社内相談だけにある論点は、内容が誰に伝わるか
4つの中で、社内相談にだけ固有の論点があります。話した内容が、社内のどこまで共有されるかです。
費用を負担しているのが勤務先である以上、記録の扱いや共有範囲は制度ごとに決められています。守秘が徹底されている制度もあれば、人事に要約が渡る制度もあります。
そのため、社内制度を使う前に確認したいのは3つです。相談内容が上司に共有されるか。人事評価の資料になるか。相談したこと自体が記録に残るか。この3つを制度の説明資料か担当窓口で確かめます。
確認できない場合は、社内では現職の中で解決したいことだけを話し、転職を含む選択肢は社外で話す、と分けるほうが安全です。使わないほうがいいという意味ではありません。社内相談が向いているのは、いまの会社の中で動く余地を探したいときです。異動の可能性や制度の使い方は、社外の相談員よりも社内のほうが正確に答えられます。
厚労省の相談コーナーは、求人を出さない仕組みになっている
厚生労働省委託のキャリア形成・リスキリング相談コーナーでは、キャリアコンサルティングにおいて職業紹介を行わないことが明記されています。求人を出す動機が構造上ないということです。
ここで注意したいのは、公的な窓口がすべて求人を出さないわけではないという点です。ハローワークは職業紹介を行う機関です。相談コーナーはハローワーク内にも設置されていますが、この事業のキャリアコンサルティングと、ハローワークの職業紹介は別の機能です。「公的だから求人の話にならない」ではなく、「この事業のキャリアコンサルティングでは職業紹介を行わない」と理解しておくほうが正確です。
転職するかどうかを決めていない段階では、これが利点になります。「まず求人を見てみましょう」という展開が起きないので、決めていないまま話を進められます。
この相談コーナーのキャリアコンサルティングは1回60分で、マイジョブ・カードの案内には「無料・原則1回」と記載されています。ただし、利用できる回数や継続支援の有無はプログラムによって異なることがあるため、申込時に確認します。いずれにしても長期の伴走を前提とした設計ではないので、その1回で何を持ち帰るかは自分で決めていく必要があります。相談先を種類ごとに比べたい場合は、女性のキャリア相談先の選び方も参考になります。
いま自分に必要なのは、どれか
ここまでの4類型を、自分の状況に当てはめます。判断の起点は「どこがいいか」ではなく「いま何が足りていないか」です。
頭の中を整理したいなら、求人を持たない窓口
何に迷っているのか自分でも言葉にできない、選択肢が多すぎて比べられない。この状態であれば、求人紹介を目的としない窓口が向いています。
厚労省の相談コーナーがこれにあたります。転職を決めていなくても対象で、在職中でも使えます。自治体が女性向けに設けている就業支援の窓口も、求人紹介を行わない設計のものがあります。住んでいる地域の名称と「女性 就業支援」で調べると、同じ性質の窓口が見つかることがあります。
求人や年収の相場を知りたいなら、求人を持つ窓口
自分の経験でどんな求人に応募できるのか、いまの年収は相場と比べてどうなのか。この2つは、求人を持っている窓口でないと具体的な答えが返ってきません。
転職エージェントがこれにあたります。応募するかどうかは、情報を見てから決めれば足ります。
数か月かけて続けたいなら、そこで初めて有料を比べる
1回や2回では終わらない、時間をかけて自己理解と行動を並行させたい。そう判断したときに初めて、有料サービスが検討対象になります。
順番が逆にならないようにします。無料体験を受けたから継続する、ではなく、継続が必要だと判断したから比べる、です。無料体験の場で契約を決めなくても構いません。予約前に、無料相談だけでも利用できるか、契約はあとから判断できるかを確認しておきます。
事実を知らないだけなら、相談より先に調べる
4つ目は、相談しないという選択肢です。
自社に異動の制度があるか、希望する職種の求人がどれくらいあるか、必要な資格は何か。これらは事実確認であって、対話で答えが出るものではありません。社外の相談員は、あなたの会社の就業規則を持っていません。社内制度の正確な運用条件は、就業規則か社内の窓口で確かめることになります。
見分け方はこうです。足りないのが事実なのか、判断の軸なのか。「条件は分かっているが、どちらを選びたいか決められない」なら対話が向いています。「そもそも制度があるか知らない」なら、先に調べたほうが早く進みます。
自分の経験や価値観を書き出す段階で止まっている場合は、社会人の自己分析のやり方を先に通しておくと、相談に行くかどうかの判断自体がしやすくなります。
MOREARIAでは、迷いながら働き方を選び直してきた女性たちのインタビューを多数掲載しています。誰かに相談して決めた人も、相談せずに決めた人もいます。その両方の物語が、いまの判断のヒントになるはずです。
無料のキャリア相談に関するよくある質問
選ぶ前と、受けたあとに迷いやすい点を3つまとめます。
無料だと、相談の質は落ちるのでしょうか?
無料か有料かは、費用を誰が負担しているかの違いであって、相談員の力量を示すものではありません。厚労省の相談コーナーではキャリアコンサルタントが対応します。ただし、無料の窓口は1回あたりの時間や回数に制限があることが多く、長期の伴走は想定されていません。質の差というより、扱える範囲の差として捉えるほうが実態に近くなります。
1回で解決しなかったら、有料に進むべきですか?
解決しなかった理由を先に分けます。社内制度や求人の情報が足りなかったのであれば、自分で調べる段階です。判断の軸が定まらなかったのであれば、もう一度誰かと話す価値があります。方向は決まっていて応募書類や面接で止まっているのであれば、キャリアの整理ではなく転職の実務支援に移る段階です。有料へ進むのは、2つ目に当てはまり、かつ数か月続ける必要があると判断したときで足ります。
無料体験を受けたあと、契約せずに帰ってもいいですか?
問題ありません。無料体験は事業者が販促費として負担しているもので、その場で契約する義務はありません。判断がつかないときは「一度持ち帰って考えます」と伝えて構いません。予約の前に、無料相談だけでも利用できるか、契約はあとから判断できるかを確認しておくと、当日の負担が軽くなります。
まとめ
無料のキャリア相談を選ぶときに見るのは、価格ではなく負担者です。誰が費用を出しているかで、相談のあとに提示できる選択肢が変わります。どれが優れているという話ではなく、目的との組み合わせの問題です。
無料なら利用したい人は56.0%、費用を負担してでもは1.9%。無料で探すのは多数派
無料は4種類。負担者は国や自治体の事業費、勤務先、求人企業、事業者の販促費
転職を決めていないなら、求人を持たない窓口から入ると話が噛み合う
足りないのが事実なら、相談より先に調べる。それも正しい選択肢
今日決めるのは、予約先ではなく順番です。いま自分に足りないのが「頭の整理」「求人情報」「継続的な支援」「事実確認」のどれなのかを、1つだけ選んでみてください。選んだ時点で、行くべき窓口は自動的に絞られます。
参考資料
- 厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」(2026年7月31日公表)
- 厚生労働省委託事業「キャリア形成・リスキリング推進事業」個人向けキャリアコンサルティング案内
- 職業安定法 第32条の3第2項
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akina
MOREARIA 代表 / 編集長
MOREARIA編集長。「やりたいことはあるけど、踏み出せない」女性に向けて、挑戦する人たちのリアルな物語と、自分らしい一歩を考えるきっかけを届けるメディアを運営。マーケティング支援事業や実践型スクール「MOREARIA LAB」も展開している。
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