この記事でわかること
- キャリアプランが思いつかないのは、多数派だという事実
- やりたいことがなくても、価値観と条件から逆算する手順
- ライフイベントが未定でも書ける「仮のプラン」の考え方
- プランは変えていい。1年後に見直せばいいという前提
キャリアプランの欄が、白紙のまま止まっている。周りは何か書いているのに、自分だけ何も浮かばない。そんな時間を過ごしたことはありませんか。
これは、特別な誰かの話ではありません。エン・ジャパンが2024年に社会人4,521名を対象に行った調査では、キャリアプランを立てていると答えた方は47%でした。転職サイトの利用者を対象とした調査なので社会人全体を代表するものではありませんが、少なくとも、明確なプランを持っていることが当たり前とは言い切れない結果です。
書けないのは、意識が低いからでも、準備不足だからでもありません。多くの場合、書き始める順番が違っているだけです。この記事では、例をなぞる前に決めておくことを整理します。読み終える頃には、白紙の欄に置ける言葉が、ひとつは見つかっているはずです。
キャリアプランが思いつかないのは、あなただけではない
先に結論をお伝えします。キャリアプランが書けない理由のひとつに、やりたいことがないことではなく、いきなり遠い将来から考えようとしていることがあります。
先ほどの調査では、キャリアプランを立てていると答えた47%のうち、内訳は「明確なキャリアプランを立てている」が5%、「大まかなキャリアプランを立てている」が42%でした。つまり、明確に立てている方は20人に1人程度でした。
多くの方は、大まかな方向を持っているだけです。それでも「立てている」と答えられる。この事実は、ハードルの高さが自分の中で上がりすぎていた可能性を教えてくれます。
書けない理由は、だいたい3つのどれかに当てはまります。
- 01
やりたいことが、はっきりしない
好きなことや情熱から考えようとすると、そこで止まります。
- 02
この先どうなるか分からず、決められない
生活の変化や会社の状況が読めないと、先を書くこと自体に抵抗が出ます。
- 03
一度書いたら、その通りにしなければと思っている
決意表明だと捉えていると、書くことが重くなります。
HINT
「やりたいこと」の欄を、一度閉じてみる
やりたいことが浮かばないまま、その欄を見つめ続けていませんか。一度そこを閉じて、代わりに「この3年で、できるようになりたいこと」だけを考えてみてください。やりたいことは、できることが増えたあとに見えてくることもあります。順番は、逆でも構いません。
3つとも、あなたの能力の問題ではありません。前提の置き方の問題です。だから、前提を変えれば書けるようになります。
なかでも起こりやすいのが、10年後から考えようとして止まるパターンです。10年後は、誰にとっても分からない場所です。分からないものを最初に埋めようとすれば、そこで手が止まりやすくなります。順番を逆にするだけで、この詰まりが解けることがあります。
キャリアプランは、決意表明ではない
まず外しておきたい前提があります。キャリアプランは、その通りに実行することを約束する書類ではありません。現時点での見取り図です。
地図は、道が変われば書き直します。転職しても、部署が変わっても、生活が変わっても、書き直せばいいだけです。むしろ、変わる前提で書いたほうが、書きやすくなります。
もし1年後に見直して、いまも納得できる内容ならそのままで構いません。状況や考えが変わったときだけ、書き直せば十分です。
やりたいことがなくても書ける、3つの逆算の手順
やりたいことが浮かばないときは、そこから考えるのをいったんやめてみましょう。代わりに使えるのが、次の3つの入り口です。どれか1つでも構いません。
- 01
過去から棚卸しする
これまでの仕事で、苦にならなかったこと、成果が出たことを書き出します。
- 02
価値観から逆算する
安定、裁量、誰かとの関わり、時間の融通。何を大事にしたいかを決めます。
- 03
短期目標から積み上げる
半年から1年でできるようになりたいことを1つ決め、その先を後から考えます。
このうち、いちばん手が動きやすいのは3つ目です。半年後であれば、10年後より具体的に考えやすくなります。
過去の棚卸しでは、成果ではなく「感触」を見る
棚卸しというと、実績を並べる作業だと思われがちです。でも、書けない状態のときに実績から入ると、また止まります。
見るのは感触です。どの仕事のときに時間が早く過ぎたか。どの作業は、終えたあとも消耗感が比較的少なかったか。逆に、どの場面がいちばん消耗したか。
たとえば「数字を合わせる作業は苦にならなかったけれど、初対面の方への電話は毎回きつかった」。これが分かれば、進む方向はかなり絞れます。得意不得意ではなく、消耗するかしないかで見るのがコツです。
ただし、消耗しにくかったことは候補を見つける手がかりであって、それだけで決めるものではありません。そのあとに、成果が出たか、仕事として求められているか、生活の中で続けられるかも確認してください。ここまで見て初めて、続けられる方向が絞れます。
価値観は、譲れないものを2つだけ決める
価値観を考えようとすると、これも抽象的になりがちです。全部大事に思えて、選べなくなります。
そこで、最初は譲れないものを2つ程度まで絞ってみてください。数が多いほど比べにくくなるためです。3つ以上ある場合は、優先順位を付けるだけでも構いません。安定と裁量、時間の融通と収入、といった形で並べて、どちらを先に取るかを決めていきます。
決め方に迷ったら、過去に「これは我慢できなかった」と感じた場面を思い出してみてください。譲れないものは、満たされたときより、失われたときのほうがはっきり分かります。
絞り込めると、選ぶべき道も見えてきます。時間の融通を最優先にするなら、責任の重い役職は5年後に置かないほうが一貫します。収入を優先するなら、資格や専門性に時間を使う判断になります。この一貫性が、プランの説得力になります。
ライフイベントが未定でも書ける、仮のプランの立て方
結婚や出産、介護の予定が分からないから書けない。これも、とてもよく聞く理由です。
ここでの結論はシンプルです。ライフイベントは、書かなくてもプランは成立します。
転職の面接では、書く義務はありませんし、自分から開示する必要もありません。採用選考は本来、本人の適性や能力にもとづいて行われるべきものです。男女雇用機会均等法でも、女性にだけ結婚や出産後の予定を尋ねるなど、男女で異なる取り扱いをすることは禁止されています。
一方、社内のキャリアシートは少し性質が違います。両立支援の制度を使いたい場合、具体的な予定を書かなくても「将来的に柔軟な勤務ができるよう、業務設計とスキルを整えたい」と書いておく意味はあります。会社は配置や育成の材料として見ているためです。
そのうえで、それでも気になる場合は、複数のシナリオを並べる方法があります。「このまま働き続けた場合」と「一時的に働き方を変えた場合」を、両方書いておくやり方です。
たとえば事務職の方なら、「働き続けた場合は3年後に経理の実務を一通り任される」、「働き方を変えた場合は在宅でも回せる業務の担当に移る」。どちらの道でも、経理の知識を身につけることは共通しています。
共通部分を先に書いて、分岐する部分だけを2つ並べる。こうすると、未定であることが書けない理由ではなくなります。
仮のプランで大事なのは、共通部分を見つけること
シナリオを分けるとき、多くの方が分岐のほうに目を向けます。でも、まず注目したいのは、複数のシナリオに共通する部分です。
どんな道を選んでも必要になるもの。それは、たいていの場合スキルや実務経験です。パソコンの操作、数字の扱い、文章の書き方、相手への説明。これらは、働き方が変わっても持っていけます。
つまり、未定だからこそ、どこでも通用するものを先に積む。そう考えると、迷っている期間も準備の期間になります。
働き方の選択肢そのものを知っておきたい場合は、結婚後の働き方の選択肢を整理した記事もあわせて読んでみてください。生活の変化のあとに、どんな道があるのかをまとめています。
MOREARIAでは、自分なりのキャリアを選びとってきた女性たちのインタビューを掲載しています。最初から明確なプランを持っていた方は、ほとんどいません。書きながら、進みながら変えてきた。そのリアルな物語が、あなたの白紙の欄をほどくヒントになるはずです。
キャリアプランが思いつかないときのよくある質問
不安として残りやすい疑問を、4つ整理しました。
面接でキャリアプランを聞かれたとき、正直に「まだ決まっていない」と答えてもいいですか?
そのまま伝えるより、いま考えている方向を短く話すほうが伝わります。「3年後までに◯◯ができるようになりたい。その先は、この3年で見えてきた方向に進みたい」。この形なら、決まっていない部分があっても誠実に答えられます。曖昧なまま長く話すより、短くても具体的なほうが印象に残ります。
立てたキャリアプランと違う方向に進んでしまったら、失敗ですか?
失敗ではありません。キャリアプランは、その時点で持っている情報をもとに書いた見取り図です。働くうちに情報が増えれば、より自分に合う道が見えてくるのは自然なことです。書き直した回数は、迷った回数ではなく、考えた回数だと捉えて大丈夫です。
何年先まで書けばいいのでしょうか。
3年後だけでも構いません。具体的に書くのは3年後、5年後は役割の変化、10年後は方向性、という配分が現実的です。10年後の欄が埋まらなくても、3年後が具体的なら、プランとして十分に機能します。
AI化で仕事の中身が変わりそうで、先を書けません。
変わる前提で書いて構いません。「就活の教科書」が2026年8月に25〜34歳の会社員200名を対象に行った調査では、54.5%がAIの普及による将来のキャリアに不安を感じていると回答しています。
このとき有効なのは、職種や役職ではなく、「身につけたいこと」を軸に書く方法です。数字の扱い、文章の書き方、相手への説明といったスキルは、仕事の中身が変わっても活かせます。プランは見取り図なので、状況が変わったら書き直せば十分です。
まとめ|例に自分を合わせるのではなく、1行だけ自分の言葉で
キャリアプランが思いつかないのは、あなたに問題があるからではありません。書き始める順番と、置いている前提の問題です。最後に、この記事の要点を振り返っておきましょう。
明確なプランを立てている方は20人に1人程度。大まかな方向で十分
やりたいことからではなく、過去の感触、価値観、短期目標から入る
ライフイベントは書かなくていい。書く場合は共通部分を先に決める
プランは見取り図。1年後に納得できていれば、そのままで構わない
今日できるのは、この3年でできるようになりたいことを1つ書き出すことだけで十分です。スキル名でも、任されたい業務でもかまいません。その1行は、10年後の完璧な計画よりも、確実にあなたを動かします。あなたの歩幅で大丈夫です。
SUPERVISED BY
akina
MOREARIA Inc. 代表 / MOREARIA編集長
MOREARIA編集長。「やりたいことはあるけど、踏み出せない」女性に向けて、挑戦する人たちのリアルな物語と、自分らしい一歩を考えるきっかけを届けるメディアを運営。マーケティング支援事業や実践型スクール「MOREARIA LAB」も展開している。
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