女性のキャリアデザインが描けないのは、自己分析が足りないからだろうか

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女性のキャリアデザインが描けないのは、自己分析が足りないからだろうか

この記事でわかること 自己分析がよく効く詰まりと、それだけでは動きにくい詰まりの見分け方 一人で組み立てるのが難しくなっていると、国の計画が認めていること いま決めておくことと、決めないでおいていいことの線引き 設計しき […]

2026-9-1

女性のキャリアデザインが描けないのは、自己分析が足りないからだろうか

この記事でわかること

  • 自己分析がよく効く詰まりと、それだけでは動きにくい詰まりの見分け方
  • 一人で組み立てるのが難しくなっていると、国の計画が認めていること
  • いま決めておくことと、決めないでおいていいことの線引き
  • 設計しきらないまま前に進むための、最小限の材料

「キャリアデザイン」という言葉を調べて、ワークシートのようなものにたどり着いて、ほとんど埋められないまま閉じた。そんな経験はないでしょうか。何歳で何をするか、という欄の前で手が止まる。

そういうとき、多くの解説記事は「まず自己分析から」と言います。けれど書けないのは、自分のことを分かっていないからとは限りません。分かっているのに書けない、という状態が確かにあります。

この記事では、「描けない」の中身をいくつかに分けたうえで、いま決めることと、決めないでおいていいことの線引きを整理します。読み終えて、まだ決め切れていなくても構いません。

「描けない」を分けてみる|自己分析で解けるもの、解けないもの

キャリアデザインが描けない、と一言でいっても、詰まっている場所は同じではありません。ここは編集部の整理ですが、詰まりの原因を4つに分けてみると、対処の仕方が変わってきます。

  • 01

    材料がそろっていない

    これまでの仕事を書き出したことがない状態です。何ができるようになったかを言葉にしていないと、そもそも並べるものがありません。

  • 02

    選ぶ基準が決まっていない

    材料はあるけれど、何を優先するかが決まっていない状態です。収入も時間も専門性も、全部大事だと思っていると選べません。

  • 03

    自分では決められない変数がある

    相手のいること、会社の事情、自分の体のこと。希望ははっきりしているのに、前提が自分の手の中にない状態です。

  • 04

    決める時期がまだ来ていない

    情報が出そろっていないのに、先に決めようとしている状態です。急いで決めても、あとで組み直すことになります。

HINT

自分の詰まりが、どの番号かを見てみる

いま手が止まっているのは、01から04のどれでしょうか。ひとつとは限りません。ただ、01と02が中心なのか、03と04が中心なのかで、次にやることはかなり違ってきます。

01と02なら、自己分析がよく効く

前の2つは、手を動かすと進みやすい部分です。過去の仕事を書き出す。成果と、苦にならなかったことと、つらかったことを分ける。そこから、何ができるようになったのかを取り出す。作業としての道筋がはっきりしています。

手順を丁寧にたどりたい場合は、社会人向けの自己分析のやり方をまとめた記事があります。選ぶ基準のほうで詰まっているなら、選択肢を1枚の表で比べる手順のほうが近いはずです。

つまり、01と02で止まっているなら、「自己分析が足りない」という診断はおおむね当たっています。ただし02のほうは、時間をかければ必ず決まるとも限りません。収入と時間のどちらを取るか、家族の事情をどう置くかといった葛藤が絡んでいると、材料がそろっていても選べないことがあります。その場合は、次に書く03に近い性質を持っています。

03と04は、自己分析だけでは動きにくい

問題は、後ろの2つです。ここで止まっている人に「まず自己分析を」とだけ言っても、動く範囲は限られます。分析すべき自分の側は、すでにかなり分かっているからです。

Yahoo!知恵袋の2025年8月の投稿に、「今年で30歳、結婚を控えている女」と書き出す相談があります。この方は、転職したい業界に目星をつけていて、子どもも希望していて、キャリアも諦めたくないと書いています。希望は、かなり具体的に言語化されています。それでも順番が決められない、という相談です。

同じ知恵袋の2023年1月には、「40歳女性です」と始まる投稿があります。2か月前に転職したばかりで、薬剤師として責任者を任されていて、辞めたくない。契約更新の時期まで把握している。それでも決められないのは、夫が転職活動を始めて、勤務先が海外になるかもしれないからです。

この2つは、性質が違います。前の方は、自分の身に起こりうることの時期が読めない。後の方は、他人の選択によって自分の前提が変わる。けれど共通しているのは、どちらも自分の側の整理は済んでいるということです。

もちろん、この2件から世の中の傾向を語ることはできません。ここで見たいのは数ではなく、詰まり方の形のほうです。

止まっているのは、考えが足りないからではありません。考えた結果、自分では動かせない変数に突き当たっているからです。ここに自己分析のワークシートをもう1枚重ねても、埋まる欄はあまり増えないと思います。

ただし、自己分析がまったく無駄になるわけではありません。「先が読めない状態を、自分はどのくらいまで抱えていられるか」を確かめる使い方はできます。許容できる幅が分かると、保留したまま動き出せる範囲も見えてきます。

一人で描けないのは、あなただけの問題ではない

もうひとつ、知っておいていいことがあります。一人でキャリアを組み立てるのが難しくなっていることを、国の側も認めています。

国の計画に、そう書かれている

2026年3月31日に告示された第12次職業能力開発基本計画は、令和8年度から令和12年度までの計画です。そこには、雇用と仕事を取り巻く環境の変化が激しくなる中、労働者個人が単独で、労働市場や会社の状況、自分の能力等を適切に把握して、キャリアの目的を定め、それに向かって能力開発を行うことは難しくなってきている、と書かれています。

行政の文書としては、かなりはっきりした書き方です。この計画が置いている前提は、環境の変化が激しくなり、個人が単独で状況を把握するのが難しくなっている、というものです。そのうえで、キャリアコンサルティングによる伴走支援が必要だと続けています。

ここからは編集部の受け止めですが、描けないことを本人の努力不足として説明する書き方には、少なくともなっていません。そう読める資料が、国の計画として出ている。それは知っておいていいことだと思います。

同じ計画の「女性への支援」の項には、育児や出産等により一旦離職した後に非正規雇用労働者となる場合や、離職せずに継続就業をした場合であってもキャリアアップの機会が制約される傾向もある、という記述もあります。続けた場合でも機会が制約される。そういう環境の中で先を描こうとしているのだ、という前提は持っておいていいと思います。

法律も「職業生活設計」を基本理念に置いている。ただし方法は書いていない

職業能力開発促進法という法律には、「職業生活設計」という言葉が定義されています。長期にわたる職業生活の目的を定め、その実現のために自ら計画すること。キャリアデザインという言葉に近い概念です。

そして同じ法律の第3条の3には、労働者は職業生活設計を行い、それに即して自発的に職業能力の開発と向上に努めるものとする、とあります。主語は労働者です。ただし文末は「努めるものとする」で、この条文は総則、つまり基本理念を示す部分に置かれています。罰則つきで計画の作成を命じるものではありません。それでも、あなたがいま考えようとしていることは、法律の側でも働く人の営みとして想定されている、とはいえます。

そして、やり方までは書かれていません。職業生活設計という言葉は定義されているけれど、変数が読めないときにどうするかは、条文のどこにもない。そこは各自で工夫するしかない、というのが現在地です。

決めることと、決めないでおくこと|線を引いてみる

では、03と04で止まっている場合はどうするか。ここも編集部の整理になりますが、決める対象を入れ替えると、手が動くようになります。書き出すものを3つに分けてみてください。

  • 01

    いま確定していること

    現在の仕事、収入、身についている力、使える時間。事実として書けるものだけを並べます。

  • 02

    仮に置いておくこと

    数年後にこうなっていたい、という方向。変わる前提で、鉛筆で書くくらいの扱いにします。

  • 03

    自分では決められないこと

    相手のいること、会社の事情、健康。ここは予定表に書き込まない、と決めてしまいます。

決めるのは「未来」ではなく「基準」

03を予定表から外すと、書く欄が空きます。そこに入れるのは、未来の職種ではなく、自分の基準です。

収入はここを下回ると困る。専門性はひとつ手放したくない。働く場所に縛られすぎたくない。年に何時間かは学ぶ時間がほしい。必要になったら仕事量を落とせる状態でいたい。こうした条件は、未来がどう転んでも使えます。

「10年後に何になるか」は状況が変われば無効になりますが、「何を下回ると困るか」は無効になりません。変わらないものを先に決めておくと、変わるものに振り回されにくくなります。

ちなみに、この「不確実なことを排除せず、前提として扱う」という発想は、1999年にミッチェル、レビン、クランボルツの3名が発表した計画的偶発性理論とも重なります。日本では「クランボルツの理論」として紹介されることが多いのですが、原典の著者は3名です。予期しない出来事をなくそうとするのではなく、起きることを前提に、そこから機会を拾える行動を増やしていく、という考え方です。

決めないでおくことを、決めておく

もうひとつ大事なのは、「まだ決めない」を選んだと自覚しておくことです。

決めずにいるのと、決めないと決めるのは、心の負荷がまったく違います。前者は宙ぶらりんですが、後者は選択です。「この件は情報が出そろうまで保留する。そのかわり、いまはこれをやる」と書いておく。それだけで、埋まらない欄を見るたびに感じる後ろめたさは、かなり軽くなります。

設計が苦しくなるのは、決められないことを決めようとしているときです。設計とは、すべてを決め切ることではありません。決める範囲を自分で決めることです。

それでも心が重いときは、キャリアの話というより、いまの働き方そのものがしんどくなっているのかもしれません。そういうときは、自分軸がないと感じる女性が仕事で苦しくなる理由のほうから読んでみてください。

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キャリアデザインが描けないときのよくある質問

最後に、この状態でよく聞かれる疑問を3つ整理しておきます。

自己分析はやらなくていい、ということですか?

そうではありません。この記事の01と02、つまり材料がそろっていない場合と、選ぶ基準が決まっていない場合には、自己分析はよく効きます。03と04で止まっているときは、自己分析だけでは動きにくい、という話です。ただしその場合も、先が読めない状態をどこまで抱えていられるかを確かめる使い方はできます。まず自分がどこで詰まっているかを見分けることをおすすめします。

「決めない」でいると、周りに置いていかれませんか?

決めないでおくのは、自分では動かせない変数のほうです。基準と、次にやることは決めます。むしろ、決められない未来を無理に決めてしまうと、状況が変わったときに全部を組み直すことになります。保留する範囲をはっきりさせるほうが、結果的に前に進みやすくなります。

誰かに相談したほうがいいのでしょうか?

一人で考えていると、自己評価に偏りやすくなります。信頼できる同僚や元同僚に強みを聞いてみるだけでも視点は増えます。厚生労働省の委託事業として、全国47か所のキャリア形成・リスキリング支援センターや、全国のハローワーク内に設置された相談コーナーで、キャリアコンサルティングを無料で受けることもできます。1回60分で、在職中の方も対象です。ただし職業紹介は行っていないため、転職先を紹介してもらう窓口ではありません。

まとめ|決める範囲を、自分で決める

描けないことと、考えていないことは、まったく別のことです。最後に、この記事の要点を振り返っておきましょう。

  • 「描けない」には、自己分析がよく効く詰まりと、それだけでは動きにくい詰まりがある

  • 自分では決められない変数で止まっているなら、ワークシートを重ねるより決める対象を入れ替える

  • 一人で組み立てるのが難しくなっていることは、国の基本計画にも書かれている

  • 決めるのは未来の職種ではなく、どう転んでも使える自分の基準

今日できるのは、紙を1枚出して、いま確定していることだけを書き出してみることです。決められないことは、書かなくて構いません。今日、その1枚を書いてみる。それだけでも、あなたの世界を確実に広げる前進です。あなたの心地よい一歩を、応援しています。

参考資料

  • 厚生労働省「職業能力開発基本計画」(令和8年3月31日厚生労働省告示第169号)
  • 職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)
  • 厚生労働省委託事業「キャリア形成・リスキリング推進事業」
  • Mitchell, K. E., Levin, A. S., & Krumboltz, J. D.「Planned Happenstance: Constructing Unexpected Career Opportunities」Journal of Counseling & Development 第77巻第2号 (1999年)

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akina

MOREARIA 代表 / 編集長

MOREARIA編集長。「やりたいことはあるけど、踏み出せない」女性に向けて、挑戦する人たちのリアルな物語と、自分らしい一歩を考えるきっかけを届けるメディアを運営。マーケティング支援事業や実践型スクール「MOREARIA LAB」も展開している。

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