この記事でわかること
- 好きなことを仕事にすると楽しくなくなる理由
- 趣味のまま残すことの価値
- 仕事との距離の取り方3つ
- 迷ったときの判断のしかた
好きなことを仕事にしたい。そう思う一方で、それをしたら好きではなくなるのではないかという不安もある。そんな迷いを抱えていませんか?
その不安は、気のせいではありません。心理学の研究でも説明できる現象で、実際に経験している方もいます。
この記事では、なぜそうなるのかを整理したうえで、仕事にしない選択肢も含めた距離の取り方をお伝えします。結論として「趣味のままにする」でも構いません。決めるための材料をそろえることが目的です。
好きなことを仕事にしたい女性は6割、実現は2.6%
まず、いまの状況を確認しておきましょう。
女の転職typeが働く女性を対象に行った調査では、趣味を仕事にしたいと答えた方が59.2%でした。一方で、すでに趣味を仕事にしている方は2.6%にとどまります。この調査は2025年に364人を対象に実施されたものです。
この差を「実現が難しいから」と読むこともできます。ただ、もうひとつの見方があります。
同じ調査では、趣味が人生に与える影響として「ストレス解消やリフレッシュ」が86.2%で最多でした。つまり、多くの方にとって趣味は回復の手段として機能しているということです。
仕事にしなかった理由の中には、「したくてもできなかった」だけでなく、「しないほうがいいと判断した」も含まれているはずです。この記事では、後者の可能性を丁寧に見ていきます。
好きなことを仕事にすると、楽しくなくなるのはなぜか
不安の正体から見ていきます。ここには、心理学で説明できる部分があります。
アンダーマイニング効果という現象
内発的に楽しんでいた活動が、報酬や評価の対象になると、意欲が下がることがあります。これをアンダーマイニング効果と呼びます。
心理学者のエドワード・L・デシとマーク・R・レッパーが1971年に行った実験で示されました。大学生を2つのグループに分け、パズルを解いてもらいます。片方のグループには解けるたびに報酬を与え、もう片方には何も与えません。
その後、自由時間にどれくらいパズルに触れるかを観察したところ、報酬を与えられたグループのほうが、触れる時間が少なくなりました。パズルが「報酬を得るための手段」に変わったためだと説明されています。
趣味を収益化した場合も、同じことが起こり得ます。楽しいから作っていたものが、売れるかどうかで判断するものに変わる。この変化が、楽しさを削ることがあります。
ただし、必ずそうなるわけではありません。デシは、報酬に「これはあなたの優秀さの証だ」という情報が添えられる場合、意欲の低下が起きにくいとも述べています。つまり、条件によって結果は変わります。
仕事になると、作業の中身が変わる
もうひとつ、現実的な理由があります。仕事にすると、好きな作業以外の時間が増えることです。
たとえばお菓子作りが好きな方が販売を始めた場合、実際にやることは、材料の仕入れ、大量の制作、包装、発送、価格の計算、写真の撮影、問い合わせへの返信です。作ること自体は、全体の一部にすぎません。
趣味だった頃は、好きな作業だけをしていました。仕事にすると、その周りにある作業が大半を占めます。ここに気づかないまま始めると、「思っていたのと違う」という感覚になります。
締め切りと、他人の評価が入ってくる
3つ目は、自分のペースでなくなることです。
趣味なら、気が向いたときに、好きなだけやれます。作りたくない日は作らなくていい。仕事になると、納期があり、相手の希望があり、修正の依頼があります。
そして、評価されます。売れる、売れない。良い、悪い。数字で見えるようになります。SNSで他の方の実績が目に入れば、比べてしまいます。
好きなことだからこそ、否定されたときの痛みが大きくなることもあります。ここは、始める前に想像しておく価値があります。
HINT
考える前に、ひとつ問いかけてみる
あなたにとってその好きなことは、日々を回復させる時間でしょうか。それとも、もっと打ち込みたいのに時間が足りないものでしょうか?前者なら、仕事にしないほうが守れるかもしれません。
趣味のまま残すという選択
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
仕事にしないことは、諦めではありません。積極的な選択になり得ます。
先ほどのデータのとおり、趣味の効用として最も多いのは「ストレス解消やリフレッシュ」で86.2%でした。仕事にすると、この機能が失われる可能性があります。回復の手段を、消耗する場所に変えてしまうということです。
働くうえで、逃げ場があることの価値は小さくありません。仕事がうまくいかない時期に、まったく別の場所で没頭できるものがある。この状態は、続けるための支えになります。
もし好きなことが、あなたにとってその役割を果たしているなら、収益化しないという判断には十分な理由があります。
それでも収入にしたい場合
とはいえ、収入にしたい気持ちも本物です。その場合、全部か無かで考える必要はありません。
好きなこととお金の距離には、段階があります。次の章で、3つの取り方を見ていきます。
仕事との距離の取り方3つ
好きなことと収入の関係は、大きく3つに分けられます。
| 距離の取り方 | 内容 | 向いている場合 | 守れるもの |
|---|---|---|---|
| 趣味のまま残す | 収益化しない。純粋に楽しむ | 回復の手段として機能している | 楽しさ、自由なペース |
| 上限を決めて副収入にする | 月に数千円から数万円の範囲にとどめる | 少しだけ収入にしたい | 生活の安定、趣味の楽しさの一部 |
| 本業として育てる | 収入の柱にすることを目指す | 長期的に取り組む覚悟がある | 収入の可能性、時間の自由度 |
上限を決めるという方法
見落とされやすいのが、真ん中の選択肢です。
収益化と聞くと、本業にするか、しないかの二択で考えがちです。けれど、月に3万円までと決めて、そこで止めるという選び方もあります。
上限を決めると、無理な受注をしなくて済みます。断れるようになるので、負担が増えません。そして、少額でも収入があるという事実は、自信につながります。
この形なら、楽しさをある程度保ったまま、収入も得られます。多くの方にとって、いちばん現実的な着地点かもしれません。
もうひとつ、上限を決めることには実務的な利点もあります。副業の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になりますが、その手前で止めておけば手続きの負担が増えません。楽しさを守る目的と、手間を増やさない目的が、同じ方向を向きます。
期間を区切って試す方法
もうひとつが、期限を決めて試す方法です。
半年だけやってみる。1年やって続けたくなければやめる。こう決めておくと、始めるハードルが下がります。
そして、やめることが失敗になりません。試した結果、趣味に戻すという判断ができます。「合わなかった」という情報が手に入っただけです。
期限を決めずに始めると、うまくいかないときに辞めどきが分からなくなります。惰性で続けて、好きだった気持ちだけがすり減っていく。これがいちばん避けたい形です。
迷ったときの判断のしかた
最後に、判断の材料をお伝えします。次の3つを確認してみてください。
- 01
その好きなことは、回復の手段になっているか
疲れたときにそれをして元気になるかを考えます。狙いは、失うものの大きさを知ることです。
- 02
好きなのは「分野」か「作業」か
その分野が好きなのか、手を動かす作業が好きなのかを分けます。狙いは、仕事にしたとき何が残るかを見ることです。
- 03
収入がゼロでも続けられるか
1年間まったく売れなくても、それを続けたいかを想像します。狙いは、収入以外の動機があるかを確かめることです。
3つ目が、いちばんはっきりした答えを出してくれます。
収入がゼロでも続けたいなら、それは趣味として強い動機があるということです。仕事にしても、多少うまくいかなくても続けられる可能性があります。
逆に、収入がなければ続けないと感じるなら、それは趣味というより収入源として見ているということです。その場合、好きなことにこだわらず、続けやすさで選ぶほうが結果的にうまくいくかもしれません。
なお、好きなこと以外も含めて仕事の選び方を考えたい場合は、結婚後も働きたい女性の働き方の選択肢もあわせて読んでみてください。
MOREARIAでは、好きなことや得意なことと向き合いながら働き方を選んできた女性たちのインタビューを掲載しています。何を選び、何を残したのか。そうしたリアルな経験も、これから少しずつ増やしていきます。華やかな成功談だけではなく、迷いながら進んできた過程が記された物語は、あなたが判断するときのヒントになるはずです。
好きなことを仕事にすることに関するよくある質問
最後に、寄せられやすい質問にお答えします。
好きなことを仕事にすると、本当に嫌いになりますか?
必ずそうなるわけではありません。アンダーマイニング効果という現象は確認されていますが、条件によって結果は変わります。上限を決める、期間を区切るなど、距離を調整すれば楽しさを保てる場合もあります。
趣味のまま残すのは、逃げでしょうか?
逃げではありません。趣味が回復の手段として機能しているなら、それを守ることには十分な理由があります。仕事にすることだけが、好きなことを大切にする方法ではありません。
一度仕事にしたら、趣味には戻せませんか?
戻せます。実際に、収益化をやめて趣味に戻す方もいます。そのためにも、始める前に期限や上限を決めておくと、判断しやすくなります。
まとめ|仕事にしないことも、選択です
好きなことを仕事にするかどうかに、正解はありません。最後に、この記事の要点を振り返っておきましょう。
楽しんでいた活動が報酬の対象になると意欲が下がる現象が確認されている
趣味の効用の最多は「ストレス解消やリフレッシュ」86.2%。仕事にすると失う可能性がある
距離の取り方は3つ。趣味のまま、上限を決めて副収入に、本業として育てる
判断の決め手は「収入がゼロでも続けられるか」
今日できるのは、収益化を決めることではありません。あなたにとってその好きなことが、疲れたときに元気をくれるものかどうか。そこを一度確かめてみる。答えは、そこから見えてきます。あなたの歩幅で進む一歩を、応援しています。
SUPERVISED BY
akina
MOREARIA Inc. 代表 / MOREARIA編集長
MOREARIA編集長。「やりたいことはあるけど、踏み出せない」女性に向けて、挑戦する人たちのリアルな物語と、自分らしい一歩を考えるきっかけを届けるメディアを運営。マーケティング支援事業や実践型スクール「MOREARIA LAB」も展開している。
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