この記事でわかること
- 年収が上がらない原因を5つに切り分ける方法
- 「転職すれば上がる」と言い切れない理由
- いまの職場を離れるべきか、残るべきかの見分け方
- ライフイベントと年収アップを二択にしなくていい理由
何年働いても、年収がほとんど変わらない。同期や友人の話を聞くたびに、自分だけ止まっている気がする。私の能力が足りないのかもしれない。
そんなふうに考えたことはありませんか。けれど、その結論に飛びつく前に、確かめておきたいことがあります。
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査によると、女性の賃金は45歳から49歳と55歳から59歳の305.7千円が最も高く、40代以降はほぼ同水準で推移しています。20歳から24歳を100とした指数では127.6です。同じ指標で男性は181.4まで伸びます。厚生労働省も、女性は男性に比べ賃金の上昇が緩やかだと説明しています。
これは年齢階級ごとの平均を並べたデータで、ひとりの方の賃金がどう変化したかを追跡したものではありません。それでも、女性全体では年齢が上がっても男性ほど賃金カーブが伸びない傾向が確認できます。
この記事では、年収が上がらない原因を5つに切り分けます。原因が分かれば、動くべきかどうかも見えてきます。読み終える頃には、次に確認することが決まっているはずです。
年収が上がらない原因を5つに切り分ける
先に結論をお伝えします。年収が上がらない理由は、能力だけでは説明できません。少なくとも5つの要因が絡んでいます。
- 01
本人のスキルや経験
求められる水準に届いていない場合。ただし、スキルや経験だけが原因とは限りません。
- 02
会社の賃金制度
賃金テーブルの上限が低い、評価が給与に連動していない、昇格のポストがない。制度そのものの問題です。
- 03
職種そのものの市場水準
同じ職種の相場が低ければ、社内で評価されても金額は上がりません。
- 04
雇用形態
雇用形態によって、賃金制度や待遇の決まり方が異なる場合があります。ただし、正社員とパート・有期雇用労働者の間の不合理な待遇差は法律で禁止されています。
- 05
ライフイベントと勤務条件
時短勤務、勤務地の制約、休職期間。これらは能力とは別の要因です。
HINT
5つのうち、どれに当てはまりますか
上の5つを読み返して、自分に当てはまりそうなものに印をつけてみてください。1つだけでしょうか。それとも複数でしょうか。もし1つ目以外に印がついたなら、いまやるべきことは、もっと頑張ることではないかもしれません。
5つのうち、本人のスキルや経験だけで直接説明できるのは1つ目です。ほかの要因には、会社の制度や職種の市場水準、雇用形態、勤務条件など、自分の努力だけでは変えにくい要素も含まれます。
厚生労働省も、男女間の賃金差異には、配置や昇進、勤続年数など企業の雇用管理に関わる複数の要因が影響すると整理しています。個人の努力だけで説明できるものではない、ということです。
原因が違えば、打つ手も変わります
切り分けが大事なのは、原因によって次の行動がまったく変わるからです。
スキルが原因なら、必要なものを特定して身につける。会社の制度が原因なら、社内で動くか、外に出るかを考える。職種の水準が原因なら、職種を変える検討が必要になります。雇用形態が原因なら、転換制度を確認する。
順番を間違えると、時間だけが過ぎます。制度に上限がある会社で、資格をいくつ取っても給与は変わりません。逆に、市場相場より低いだけなら、いまの経験のまま動ける可能性があります。
「転職すれば上がる」と言い切れない理由
年収を上げたいと思ったとき、最初に浮かぶのが転職かもしれません。けれど、ここにも確かめておきたい数字があります。
厚生労働省の令和7年上半期雇用動向調査によると、転職した方のうち前職より賃金が増加したのは39.4%、変わらないが25.5%、そして減少が31.5%でした。しかも減少した割合は、前年の同じ時期より2.6ポイント上がっています。
3人に1人近くは、転職して賃金が下がっています。これは、転職が悪いという意味ではありません。転職が自動的に年収を上げる手段ではない、ということです。
だからこそ、辞める前に確かめることがあります。いまの会社に、上がる余地が本当にないのかどうかです。
残るか、動くかを分ける3つの確認
判断の材料は、次の3つです。どれも、在職中に確認できます。
ひとつ目は、賃金テーブルと等級です。いまの等級で基本給がどこまで上がるのか、次の等級ではいくらになるのか。就業規則や人事制度の資料に書かれていることが多く、人事に聞けば教えてもらえる会社もあります。
ふたつ目は、昇格の条件が明文化されているかです。「頑張れば上がる」と言われるだけで、何を達成すればいいのかが示されないなら、その会社で上がる見通しは立ちにくくなります。
みっつ目が、実際の昇格実績です。制度としてあることと、運用されていることは違います。直近数年で、女性や時短勤務の方が昇格した例があるかどうか。ここに答えが出ることがあります。
3つとも確認して、上がる道筋が見えないなら、動く根拠になります。逆に道筋が見えるなら、まず社内で試す価値があります。
自分の年収が低いのか、職種の水準が低いのか
もうひとつ、切り分けておきたいことがあります。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」では、職業ごとの年収や求人賃金を確認できます。ここで、同じ職種の相場と自分の年収を比べてみてください。
相場より自分が低いなら、評価や会社の問題かもしれません。職種全体の賃金水準が低い場合は、同じ職種のままでは大幅な年収アップが難しい可能性があります。この場合は、職種を変えるという選択肢が出てきます。
なお、同じ職種でも企業規模、業界、地域、役職、経験、雇用形態によって賃金は変わります。job tagの数値は職業全体の参考値として見てください。
同じ「年収が低い」でも、意味がまったく違います。
ライフイベントがあると、上げても無駄ですか
もうひとつ、よく聞く迷いがあります。「これから出産や育児があるかもしれないのに、いま年収を上げても意味がないのでは」というものです。
この問いには、2つの前提が隠れています。
ひとつは、ライフイベントがあると必ずキャリアが止まるという前提。もうひとつは、年収を上げることと働き方を選ぶことが両立しないという前提です。どちらも、必ずそうとは限りません。
たとえば時短勤務でも、等級や職務を上げられる会社はあります。2歳未満の子を養育しながら時短勤務をしている一定の雇用保険被保険者には、原則として賃金額の10%が支給される育児時短就業給付金という制度もあります(時短前の賃金との関係によって支給額が調整される場合があります)。
大切なのは、いまの制約を「一生続く前提」として扱わないことです。子どもの年齢も、家族の状況も、会社の制度も変わります。いまの条件だけを前提に将来の選択肢まで狭めると、状況が変わったときに選べる幅が小さくなる可能性があります。
二択にしないための考え方
「年収を取るか、働きやすさを取るか」と考えると、必ずどちらかを諦めることになります。
そうではなく、比べる項目を増やしてみてください。年収、労働時間、通勤時間、在宅勤務の可否、休暇の取りやすさ、昇給の余地、そして仕事内容そのものの市場価値。
たとえば年収が50万円上がっても、残業と通勤が大幅に増えるなら、1時間あたりで見ればほとんど変わらないこともあります。job tagの年収と労働時間は職業全体の参考値ですが、時間あたりの収入を考える材料にもできます。
そして、いまは働きやすさを優先する、という選択も立派な判断です。それは諦めではなく、順番の問題です。順番なら、あとから入れ替えられます。
企業を選ぶときに見られる数字がある
もし転職を検討する段階なら、応募先を調べる材料が増えています。
2026年4月1日施行の改正女性活躍推進法により、常時雇用する労働者が101人以上の企業には、男女間の賃金差異と女性管理職比率の公表が義務づけられました。厚生労働省の女性の活躍推進企業データベースで、企業ごとに確認できます。ただし公表の時期は事業年度によって異なるため、企業によって最新値が反映されるタイミングには差があります。
ただし、賃金差異という1つの数字だけで判断しないでください。厚生労働省も、労働者に占める女性割合や平均継続勤務年数などを併せて見るよう案内しています。女性の採用を増やした結果、若い層が増えて数字上の格差が大きく見える企業もあるためです。
それでも、こうした情報が公開されていること自体が、判断材料になります。
働き方の選択肢そのものを整理したい場合は、持ち運べるスキルの見つけ方をまとめた記事もあわせて読んでみてください。
MOREARIAでは、働き方や収入を自分で選び直してきた女性たちのインタビューを掲載しています。一度で理想の条件にたどり着いた方は、ほとんどいません。少しずつ動いてきた、そのリアルな物語が、あなたの迷いをほどくヒントになるはずです。
年収が上がらないときのよくある質問
不安として残りやすい疑問を、3つ整理しました。
年収が上がらないのは、やはり自分の能力の問題でしょうか?
能力はあくまで要因の1つです。会社の賃金制度、職種の市場水準、雇用形態、勤務条件も年収に影響します。厚生労働省も、男女間の賃金差異には配置や昇進といった企業の雇用管理が関係すると整理しています。まず5つのどれに当てはまるかを確かめてから、次の行動を決めてください。
いまの会社に上がる余地がないと分かったら、すぐ転職すべきですか?
急ぐ必要はありません。転職した方の31.5%は賃金が減少しています。在職中に外の相場を調べ、いまの経験で応募できる求人と、その想定年収を確認してから動くほうが確実です。在職中に調べておけば、収入を維持しながら比較できるため、焦らず選びやすくなります。
出産の予定があると、いま年収を上げても意味がないのでは?
そうとは限りません。時短勤務でも等級や職務を上げられる会社はありますし、育児時短就業給付金のように収入減を補う制度もあります。また、いま身につけた経験は、働き方が変わっても持ち運べます。目先の数年ではなく、中長期で考えると判断が変わることもあります。
まとめ|責める前に、原因を分けてみる
年収が上がらないとき、いちばん起こりやすいのが、原因を自分ひとりに引き受けてしまうことです。最後に、この記事の要点を振り返っておきましょう。
年収が上がらない原因は5つある。能力だけで説明できるのはそのうち1つ
転職した方の31.5%は賃金が減少している。動く前に社内の余地を確かめる
自分が低いのか、職種の水準が低いのかを、外の相場と比べて切り分ける
ライフイベントと年収は二択ではない。いまの制約を一生の前提にしない
今日できるのは、5つのうちどれが自分に当てはまるかを考えてみることだけで十分です。答えが出なくてもかまいません。能力以外の可能性があると気づけたなら、それはもう前に進んでいます。あなたの歩幅で大丈夫です。
SUPERVISED BY
akina
MOREARIA Inc. 代表 / MOREARIA編集長
MOREARIA編集長。「やりたいことはあるけど、踏み出せない」女性に向けて、挑戦する人たちのリアルな物語と、自分らしい一歩を考えるきっかけを届けるメディアを運営。マーケティング支援事業や実践型スクール「MOREARIA LAB」も展開している。
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