この記事でわかること
- 女性経営者になるには、創業・社内での役員登用・事業承継・共同創業という4つのルートがあること
- 4つのうち、今すぐ会社を辞める必要があるものはひとつもないこと
- 個人事業主・取締役・代表取締役で、必要な手続きと責任がどう変わるか
- 会社設立の法定費用、開業届の期限、社会保険、産休の扱いという実務の前提
「女性経営者になるには、何から始めればいいんだろう」。そう思って検索したとき、出てくるのは「おすすめの業種10選」や「成功する人の特徴」ばかりだったのではないでしょうか。読んでも、明日やることが決まらない。
それは、あなたの理解力の問題ではありません。多くの記事が「経営者になる=会社を辞めて起業する」という前提で書かれているから、答えが「何の商売をするか決めましょう」にしかならないのです。
この記事では、経営者という立場になる4つのルートを、手続き・費用・会社を辞める必要があるかで並べて比べます。読み終える頃には、4つのうち自分に近いルートが1つに絞れて、次に開く資料が決まっているはずです。
女性経営者になるには、まず「どの立場を目指すか」を決める
「経営者」という言葉は日常語です。会社法にこの役職名はありません。だから最初にやることは、あなたが目指しているのが具体的にどの立場なのかを決めることです。ここが曖昧なままだと、どのルートを選んでも途中で迷います。
もしあなたが「経営者になりたい気持ちはあるけれど、会社を辞める覚悟まではまだない」と感じているなら、それは矛盾でも中途半端でもありません。順番として、正しい場所に立っています。
「経営者」と呼ばれる立場は、ひとつではない
一般に経営者と呼ばれる人の中には、法的にまったく違う立場が混ざっています。自分の名前で商売をしている個人事業主。会社の経営を担う取締役。会社を代表する権限を持つ代表取締役。会社の株を持っているだけの株主。
同じ「社長」と呼ばれていても、責任の重さも、必要な手続きも、辞めるときの手間も違います。
たとえば株を持っているだけの人は、会社の意思決定に票を投じられますが、契約書にサインする権限はありません。逆に代表取締役は、株を1株も持っていなくても就任できます。所有と経営は、別のものです。
個人事業主・取締役・代表取締役の違い
3つの立場の違いを、実務で効いてくる項目だけに絞って並べます。
| 項目 | 個人事業主 | 取締役 | 代表取締役 |
|---|---|---|---|
| 立場 | 自分自身が事業の主体 | 法人の経営を担う役員 | 法人を代表する役員 |
| 会社法上の役員か | いいえ | はい | はい |
| 代表権 | 該当なし | 原則なし | あり |
| 立場を得るための手続き | 事業を開始したうえで、税務上の届出(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出 | 株主総会の決議による選任 | 取締役に選任されたうえで代表として選定 |
| 自分で事業を始める必要 | ある | ない | ない |
| 社会保険 | 事業の形態による | 報酬を受ける場合は原則として法人の社会保険に加入 | 原則として法人の社会保険に加入 |
| 事業上の債務 | 原則として本人が負う | 原則として会社が負う | 原則として会社が負う(個人保証は別) |
| 辞めるときの手続き | 廃業届など | 退任の登記 | 退任の登記 |
ここで見落とされやすいのが、取締役と代表取締役の間の線です。取締役になっても、代表権は自動的にはついてきません。
フリーランスは、経営者に含まれるのか
「フリーランスになれば経営者だ」と説明されることがあります。ただしフリーランスは働き方や取引の形を表す呼び方で、法的な事業形態を指す言葉ではありません。実際、2024年11月に施行されたいわゆるフリーランス法が対象とする「特定受託事業者」には、従業員を使用しない個人だけでなく、代表者以外に役員がおらず従業員も使用しない法人が含まれます。つまりフリーランスには、個人事業主の場合も法人の場合もあります。
実務上の違いは、事業が自分の労働時間に紐づいているかどうかに出ます。自分が働いた分だけ売上が立つ働き方は、休むと収入が止まります。人を雇う、仕組みで売る、資産を持つといった形に移らないかぎり、事業の形は変わりません。
どちらが上ということではありません。ただ、あなたが求めているのが「自分の裁量で働くこと」なのか「事業という仕組みを持つこと」なのかで、選ぶルートは変わります。前者なら、法人化を急ぐ必要はありません。
「社長」「執行役員」は、会社法上の役職ではないことがある
社長、専務、執行役員、事業部長。これらは社内での呼び方であって、会社法が定めた役員の種類ではありません。
執行役員は、名前が似ているので取締役と混同されがちですが、多くの会社では従業員の延長線上に置かれた社内制度です。登記もされません。「役員になった」と聞いて実際は執行役員だった、というのは珍しい話ではありません。
自分の会社で誰が本当の役員なのかを知りたいときは、法人の登記事項証明書を見るのが確実です。そこに名前が載っている人が、会社法上の役員です。
なお、この記事では「どんな人が経営者に向いているか」という資質の話は扱いません。向き不向きより先に、立場とルートを決めるほうが行動につながるからです。資質の面から考えたい場合は、女性経営者に共通する特徴と身につけ方を別の記事で扱っています。
経営者になるルートは、4つある
経営者という立場になる道は、大きく4つに分かれます。それぞれ、必要なもの、かかる時間、リスクの形が違います。
- 01
自分で創業して、法人の代表になる
副業や個人事業で試したうえで法人を設立し、役員・代表に就任する道。
- 02
今の会社で、役員に登用される
事業責任を持ち、経営人材の候補を経て取締役に選任される道。
- 03
事業承継・M&Aで、既存の会社の代表になる
顧客も従業員もいる会社を引き継ぎ、役員・代表を変更する道。
- 04
共同創業者として、役員になる
得意分野を持ち寄り、出資比率と代表権を決めたうえで就任する道。
ルート① 自分で創業して、法人の代表になる
いちばん知られている道です。ただし、ひとつ整理しておきたいことがあります。「事業を始めること」と「法人の代表になること」は別の段階だということです。
順番としては、事業を試す、個人か法人かを決める、法人を設立する、役員・代表に就任する、体制を整える、という流れになります。多くの人がつまずくのは3番目ではなく、1番目です。事業が成り立つ前に法人を作ってしまうと、固定費だけが先に発生します。
まず個人事業として小さく試し、続けられそうだと分かってから法人化する。この順番でも「経営者になる」ゴールは変わりません。起業の初期段階については、女性の起業を何から始めるかを5ステップで整理した記事が参考になります。
ルート② 今の会社で、役員に登用される
会社を辞めずに経営側へ進む道です。会社員として働いてきた人にとっては、実はいちばん経験が活きます。
流れは、事業の責任を持つ、経営人材の候補に入る、取締役候補として指名される、株主総会で選任される、となります。上場企業であれば、取締役に求められる経験はコーポレート・ガバナンス報告書やスキル・マトリックスの形で公開されていることがあります。自社のものを読めば、いま取締役会にどんな経験が足りないのかが見えます。
ただし、このルートには前提の確認が要ります。会社側にその意思があるかどうかです。数字は後の章で見ます。
ルート③ 事業承継・M&Aで、既存の会社の代表になる
すでに顧客も従業員も商品もある会社を引き継ぐ道です。ゼロから作る必要がないぶん、立ち上がりは速くなります。
ここで最も誤解が多いのが、「株を買えば社長になれる」という思い込みです。実際には、株式を取得する、株主として取締役の選任に関わる、取締役に就任する、代表取締役として選定される、という段階を踏みます。株の取得と代表就任は、別の手続きです。
確認すべきは買収価格だけではありません。会社が抱えている借入、前の経営者の個人保証がどう扱われるか、決算に出てこない債務がないか。ここを飛ばすと、代表になった後に問題が残ります。
ルート④ 共同創業者として、役員になる
一人で全部を背負わず、得意分野を持ち寄って始める道です。心強い反面、決めておかないと後で揉める項目がはっきりしています。
誰が何パーセント出資するか
誰が代表権を持つか
重要なことを誰が決められるか
役員報酬をどうするか
辞めるときに株はどう扱うか
特に出資比率を50対50にすると、意見が割れたときに何も決まらなくなります。株主総会の特別決議は、議決権の過半数を持つ株主が出席したうえで、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立します(会社法309条2項)。出資比率は取り分の話ではなく、決定権の話です。
4つのルートを一覧で比べる
| ルート | 最初にやること | 経営側になる経路 | 自己資金 | 今すぐ退職が必要か | 主なリスク |
|---|---|---|---|---|---|
| ①創業 | 副業などで顧客を試す | 法人設立から役員・代表に就任 | 必要になりやすい | 不要 | 売上をゼロから作る |
| ②社内登用 | 自社の役員選任ルートを調べる | 管理職・経営人材候補から取締役に選任 | 原則不要 | 不要 | 候補に入れない可能性 |
| ③事業承継・M&A | 譲渡案件の情報を見る | 取得後、役員・代表を変更 | 案件による | 不要(引継ぎ時に調整) | 借入・保証・簿外債務 |
| ④共同創業 | 出資比率と役割を協議 | 出資と役員構成を決めて就任 | 案件による | 不要 | 創業者間の対立 |
女性経営者が多い職種は?
帝国データバンクの2025年調査では、業種別に女性社長の割合を見ると、不動産業が17.4%と最も高く、建設業が4.9%と最も低い結果でした。開きは3倍以上あります。
ただし、この数字は「その業種が女性に向いている」ことを示すものではありません。参入時に必要な資金や資格、業界の慣行といった条件の違いが反映されています。業種を選ぶ材料としてではなく、参入のしやすさが業界によって違うという事実として受け取るのが正確です。
4つのルートを、費用・退職の要否・時間で比べる
ここが、あなたが1つに絞る章です。判断材料になる数字を、実際の調査から並べます。
会社を今すぐ辞める必要があるのは、どれか
結論から言えば、4つのうちどれもありません。
創業ルートは、個人事業として副業から始められます。社内登用ルートは、そもそも在籍していることが前提です。事業承継ルートも、案件を探して財務を読む段階までは在職中に進められます。共同創業も、初期の話し合いや試作の段階では兼業のまま動けます。
社内登用ルートでは、そもそも退職する必要がありません。残る3つも、退職を考える必要が出てくるのは、事業への関与が大きくなってからです。順番を逆にすると、収入がない状態で判断を迫られることになります。
在職中に、何が確認できるのか
ルートごとに、今週中に着手できることがあります。
- 01
創業ルート
勤務先の副業規程を読む。想定する顧客に話を聞く。一度、有料で買ってもらう。
- 02
社内登用ルート
自社の取締役が何人いて、どの部署の出身で、何歳ごろに就任しているかを調べる。上場企業ならコーポレート・ガバナンス報告書を読む。
- 03
事業承継ルート
全国47都道府県に設置された事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的窓口が扱う案件情報を見る。決算書を読む練習をする。
- 04
共同創業ルート
一緒にやる可能性のある相手と、出資比率と代表権について一度話してみる。
在職中の準備を具体的に進めたい場合は、会社を辞めずに独立準備を進める方法もあわせて読んでみてください。
何歳で経営者になっている人が多いのか
日本政策金融公庫総合研究所の2025年度「新規開業実態調査」(同公庫の融資先のうち開業後1年以内の企業が対象、回答2,165社)によると、開業時の平均年齢は43.9歳で、調査開始以来で最も高くなりました。年代別では40歳代が36.9%で最も多く、次いで30歳代が28.0%です。
さらに、帝国データバンクの2025年調査では、現役の女性社長の年齢構成で最も多いのは60歳から64歳の層でした。
つまり、20代や30代前半で始めなければ手遅れ、という事実は数字からは見えません。むしろ、経験を積んでから始めている人のほうが多数派です。
経営の経験がなくても、始められるのか
同じ日本公庫の調査では、開業した人のうち勤務経験がある人は97.6%、管理職の経験がある人は66.4%でした。一方で、経営の経験がある人は13.6%にとどまっています。
読み替えると、経営者になった人のほとんどは、会社員として働いた経験を土台にしていて、しかも経営そのものは初めてです。
会社員としてのキャリアは、経営者になるときに捨てるものではありません。部下を持った経験、予算を管理した経験、取引先と交渉した経験は、そのまま持ち込めます。
女性の割合は、いまどれくらいなのか
帝国データバンクが全国約120万社を対象に行った2025年の調査では、社長に占める女性の割合は8.6%でした。前年から0.2ポイント上がり、5年連続で過去最高を更新しています。
同社が2026年7月に実施した調査(有効回答1万518社)では、役員に占める女性の割合は平均14.2%で、前年の13.8%から上昇しました。日本公庫の2025年度調査では、新たに開業した人に占める女性の割合は25.7%で、4年連続で最高水準を更新しています。
社長の8.6%に対して、新しく開業する人では25.7%。ただし前者は全国約120万社の現役社長、後者は日本公庫が融資した開業1年以内の企業と、調査対象が異なるため単純には比較できません。それでも、新しく事業を始める層のほうが女性の割合が高いという傾向は、両調査から読み取れます。
NOTE
これらの数値は、帝国データバンクが2025年11月26日および2026年8月21日に公表した調査結果と、日本政策金融公庫総合研究所が2025年12月5日に公表した調査結果にもとづくものです。日本公庫の調査は、同公庫が2024年4月から9月に融資した企業のうち開業後1年以内の8,517社(不動産賃貸業を除く)を対象とし、2,165社から回答を得たものです。起業した人全体を無作為に抽出した調査ではない点にご留意ください。いずれも毎年更新される調査のため、最新版が公表された場合は数値が変わります。
それでも割合が上がりにくいのは、なぜか
先ほどの帝国データバンクの2026年調査には、続きがあります。女性役員が一人もいない企業は51.5%と、半数を超えていました。さらに、今後女性役員が増えると見込んでいる企業は10.8%にとどまります。
女性活躍を進めるための取り組みとして「キャリア開発・育成の充実」を挙げた企業は7.1%、「キャリアのモデルケースを提示する」は2.6%でした。会社側が育てる仕組みを持っていない場合、待っていても順番は来ません。
一方、上場企業に限ると景色が変わります。内閣府男女共同参画局の女性役員情報サイトによると、2025年7月末時点で全上場企業の女性役員比率は14.0%、プライム市場では17.7%です。プライム市場で女性役員がいない企業は2.5%まで減っています。
社内登用を目指すなら、まず自分の会社がどちら側にいるのかを確かめるところからです。
ある女性が、2年かけて気づいたこと
ここで、ひとつの想定ケースを紹介します。
ある女性は、40代で製造業の部門責任者を務めていました。役員になりたい気持ちはあったものの、上司に伝える踏ん切りがつかないまま2年が過ぎます。あるとき自社の有価証券報告書を開き、取締役の経歴を書き出してみました。全員が子会社の経営か海外事業を経験していて、自分にはどちらもない。
そこで彼女は「役員になりたい」ではなく「子会社の管理を任せてほしい」と上司に伝えました。すぐには通りませんでしたが、翌年、関連会社の管理業務が加わります。役員になれたわけではありません。それでも、待っていた2年とは違う2年になりました。
立場が変わると、お金と制度が変わる
ルートが決まったら、次に確認するのはお金と制度です。ここは思い込みが残りやすいところなので、公的な情報で確認します。
会社を作るのに、いくらかかるのか
法務省の案内によると、株式会社の設立は、定款を作り、公証人の認証を受け、出資を履行し、設立時の役員を決め、法務局に登記を申請する流れです。登記の際の登録免許税は資本金の額の0.7%で、15万円に満たない場合は15万円となります。
合同会社の場合、定款について公証人の認証は不要です。登録免許税は同じく資本金の0.7%で、最低額は6万円です。
定款認証の手数料は、日本公証人連合会によると資本金等の額が100万円未満で3万円、100万円以上300万円未満で4万円、それ以外は5万円です。ただし2024年12月1日からは、資本金100万円未満で、発起人が3人以下の個人であること、発起人が設立時発行株式のすべてを引き受けること、取締役会を置かないことのすべてを満たす場合、手数料は1万5,000円になりました。
法定費用だけを比べると、合同会社のほうが少額で設立できます。
開業届の期限は、変わっています
個人事業として始める場合の手続きです。ここは特に注意してください。
国税庁の手続案内では、「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出期限は、事業の開始等の事実があった日が属する年分の確定申告期限までとされています(所得税法229条)。
以前は「開業から1か月以内」でした。いまも1か月以内と書いてある記事や解説は多く残っています。制度は変わるので、期限や金額は必ず官公庁のページで確認する習慣を持ってください。
法人になると、社会保険が変わる
見落とされやすいコストです。日本年金機構によると、株式会社などの法人事業所は、事業主のみの場合を含めて健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所とされています。
つまり、従業員を雇わない一人の会社でも、役員報酬を受け取る代表者がいれば、原則として加入の手続きが必要になります。保険料は会社と本人の双方が負担します。
法人化を「税金が安くなるか」だけで判断すると、この負担が抜け落ちます。税額だけでなく、社会保険料と会計・税務の管理コストまで含めて比べてください。判断に迷う場合は、税理士に個人と法人それぞれの手取りを試算してもらうのが確実です。
開業には、いくら必要なのか
日本公庫の2025年度調査によると、開業費用の平均は975万円、中央値は600万円でした。ただし内訳を見ると、250万円未満が20.1%、250万円以上500万円未満が21.7%で、合わせて4割以上が500万円未満で開業しています。
平均値は、大きな金額の事例に引き上げられます。実際の分布を見るほうが、自分の場合を考えやすくなります。
同じ調査では、資金調達額の平均は1,219万円で、内訳は金融機関等からの借入が827万円、自己資金が279万円でした。全額を自己資金でまかなっている人ばかりではありません。
始めた人は、どこでつまずいているのか
同じ日本公庫の2025年度調査では、開業時に苦労したこととして、資金繰り・資金調達を挙げた人が56.9%、顧客・販路の開拓が49.9%、財務・税務・法務に関する知識の不足が36.4%でした。
上位2つは、どちらも会社を辞める前に、ある程度まで確かめられる項目です。必要な資金がいくらかを計算しておくこと、実際にお金を払ってくれる相手を先に見つけておくこと。在職中の準備が効くのは、まさにここです。
3つ目の知識不足は、一人で埋めなくて構いません。税理士や社会保険労務士に任せる前提で、費用を計画に入れておくほうが現実的です。
女性が使える公的な融資制度はあるか
日本政策金融公庫に「新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」があります。
対象は、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方のうち、女性、35歳未満、55歳以上のいずれかに該当する方です。女性については年齢の要件がありません。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)、返済期間は設備資金20年以内、運転資金10年以内で、いずれも据置期間は5年以内です。女性は原則として特別利率Aの対象になります。
ただし、担保や保証人が一律に不要とされているわけではありません。公庫は希望を聞きながら相談するとしています。制度があることと、無条件で借りられることは別です。
代表になると、産休や育休はどうなるのか
「経営者は休めない」と聞いて不安になった方もいるかもしれません。ここは、2つの制度に分けて考えると整理できます。
まず育児休業は、育児・介護休業法にもとづく、労働者を対象とした制度です。代表取締役は労働者としての性質が認められにくいため、原則としてこの制度の対象からは外れます。
一方、出産手当金は健康保険の制度で、対象は「被保険者」です。全国健康保険協会の案内では、被保険者が出産のために会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合に、出産日以前42日(多胎妊娠では98日)から出産の翌日以後56日までの範囲で支給されるとされています。
つまり、育休が使えないことと、出産に関する給付が一切ないことは、同じではありません。ただし「報酬の支払いを受けなかった場合」という要件があり、役員報酬をどう扱うかは税務上の論点にもなります。役員就任の前に、加入している健康保険と、顧問の税理士や社会保険労務士に確認してください。
代表が動けない期間に備えて、決めておくこと
制度の話とは別に、実務の備えがあります。代表が2週間動けなくなったとき、会社が止まらないかどうかです。
銀行振込の承認を誰ができるか
給与の支払いと税・社会保険の納付が滞らないか
契約書に誰がサインできるか
期限のある届出を誰が把握しているか
一人の会社ほど、この確認が効きます。産休に限らず、病気や家族の事情でも同じことが起きます。
よくある質問
女性経営者になるにあたって、検索されることの多い疑問に答えます。
女性経営者の年収はどれくらいですか
役員報酬は会社の利益と資金繰りから決まるため、一律の相場はありません。参考になるのは満足度の調査です。日本政策金融公庫総合研究所の2025年度調査では、開業について「総合的にみて満足」と答えた人は74.8%だった一方、「事業からの収入」に満足と答えた人は28.3%でした。働き方への満足と、収入への満足は別に動きます。
女性が成功しやすい自営業の職種はありますか
特定の職種が女性に向いていると示した公的なデータは確認できていません。帝国データバンクの2025年調査では、女性社長の割合が高い業種として不動産業(17.4%)が挙げられていますが、これは参入時の資金や資格などの条件を反映した結果であり、成功しやすさを示すものではありません。職種は「向いているか」ではなく、経験と顧客のあてから選ぶほうが現実的です。
一人でも会社を作れますか
作れます。株式会社も合同会社も、発起人・社員が1人でも設立できます。ただし法人になると、日本年金機構の定めにより、事業主のみの法人事業所も健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所となり、加入手続きが必要になります。「一人だから手続きは簡単」とは限らない点に注意してください。
MOREARIAでは、自分の事業や立場を選び直した女性たちのインタビューを多数掲載しています。華やかな成功談だけではなく、迷った時間やうまくいかなかった時期も含めたリアルな物語が、あなたの一歩のヒントになるはずです。
まとめ|あなたが次に開く資料は、もう決まっている
経営者になる道は、創業・社内での役員登用・事業承継・共同創業の4つがある
4つのうち、今すぐ会社を辞める必要があるものはひとつもない
株を取得することと代表になることは、別の手続きである
法人化の判断は、税額だけでなく社会保険料と管理コストまで含めて比べる
そのうえで、今日できることがひとつあります。選んだルートに応じて、次の資料を1つ開いてください。創業なら勤務先の副業規程。社内登用なら自社の役員一覧かコーポレート・ガバナンス報告書。事業承継なら公的窓口の案件情報。共同創業なら、出資比率と代表権について書かれた解説です。読むだけなら、5分で終わります。
大きな決断をする必要はありません。経営者になった人の多くも、最初から全部が見えていたわけではありませんでした。43.9歳という平均年齢には、迷いながら準備してきた時間が含まれています。
あなたの歩幅で構いません。今日は、4つのうちどれが自分に近いかを決めるところまでで十分です。その小さな一歩が、次の選択肢を増やしていきます。
参考資料
- 帝国データバンク「全国『女性社長』分析調査(2025年)」(2025年11月26日)
- 帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査(2026年)」(2026年8月21日)
- 日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月5日)
- 内閣府男女共同参画局「女性役員情報サイト」
- 法務省「株式会社の設立手続(発起設立)について」
- 法務省「合同会社の設立手続について」
- 日本公証人連合会「会社の定款手数料の改定」
- 国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
- 日本年金機構「適用事業所と被保険者」
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」
- 公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」(令和6年11月1日施行)
- 全国健康保険協会「出産手当金」
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akina
MOREARIA 代表 / 編集長
MOREARIA編集長。「やりたいことはあるけど、踏み出せない」女性に向けて、挑戦する人たちのリアルな物語と、自分らしい一歩を考えるきっかけを届けるメディアを運営。マーケティング支援事業や実践型スクール「MOREARIA LAB」も展開している。
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