この記事でわかること
- 自己分析をしても答えが出ないのは、あなただけではないという事実
- 足りないのが「分析」なのか「外の情報」なのかを切り分ける方法
- 迷っていること自体を、判断材料にしなくていい理由
- 決めきらないまま進める、小さな試し方
質問に沿って紙に書き出してみた。それでも、これといった答えが出てこない。書いたものを眺めながら、自分には何もないのかもしれないと思う。
そんな時間を過ごしたことはありませんか。これは、特別な誰かの話ではありません。厚生労働省の令和6年度能力開発基本調査で、自己啓発を行う上で問題があるとした正社員に内訳を聞いたところ、女性の26.1%が「自分の目指すべきキャリアがわからない」を挙げました。男性は16.1%です。
この記事では、やり方をもう一度並べることはしません。答えが出ないときに、何が起きているのかを整理します。読み終える頃には、次に確かめることが1つ見つかっているはずです。
自己分析をしても答えが出ないとき、何が起きているのか
先に結論をお伝えします。答えが出ない原因は、分析が足りないことではなく、判断に必要な情報が自分の中にないことかもしれません。
自己分析でわかることと、わからないことがあります。ここが混ざっているために、いくら考えても進まない状態が生まれます。
- 01
振り返れば答えが出る問い
「人と話す仕事は苦にならなかったか」「締め切りに追われる環境はどうだったか」。経験したことなら、思い出せば判断できます。
- 02
外の情報がないと出ない問い
「未経験の企画職は自分に合うか」「この業界の3年後はどうなるか」。経験していないことは、どれだけ考えても出てきません。
- 03
やってみないと出ない問い
「時短勤務で働くとどう感じるか」「在宅中心の働き方は続けられるか」。想像と実感がずれる領域です。
HINT
その問いは、思い出せば分かることですか
いま答えが出ない問いを、ひとつ書き出してみてください。それは、経験したことの中にある問いでしょうか。それとも、まだ経験していないことについての問いでしょうか。前者なら、もう少し材料を集めれば見えてきます。後者なら、考える時間を増やしても答えは出ません。
紙に向かって答えが出ないとき、その問いは1つ目ではなく、2つ目や3つ目かもしれません。だとすれば、必要なのはもっと深く考えることではなく、調べる、聞く、試すことです。
材料が出てこないときは、感情ではなく事実から
もうひとつ、よくあるつまずきがあります。「楽しかったこと」「やりがいを感じたこと」を聞かれても、何も浮かばないというものです。
淡々と働いてきた方ほど、印象的な出来事が思い当たりません。でも、それは経験がないという意味ではありません。感情から入る質問が、たまたま自分に合っていないだけです。
その場合は、事実から入ります。手帳や勤怠、メールの送信履歴を開いて、この1か月に何をしたかを並べる。担当した業務、頼まれた仕事、対応した相手。感情の記憶がなくても、記録は残っています。
記録を見返すと、自分では意識していなかった偏りが見えることもあります。特定の相手からばかり頼まれている、同じ種類の作業に時間を使っている。それも立派な材料です。
そして、その中から「もう避けたいもの」を先に選びます。好きなことより、避けたいことのほうが、たいていはっきりしています。避けたいものが3つ決まれば、選択肢はかなり絞れます。
「決められない」ときに、見るべきもの
自己分析が進んだあとでも、決められないことがあります。求人を見比べても、内定が出ても、どちらがいいのか分からない。
このとき起きているのは、条件が衝突している状態です。給与は上がるけれど、通勤時間が増える。仕事は面白そうだけれど、人間関係が読めない。どちらも大事だから、比べられなくなります。
対処は、優先順位をつけることではありません。まず、何と何が衝突しているのかを言葉にすることです。
たとえば「収入」と「時間の融通」がぶつかっているなら、それは条件の問題です。「成長したい」と「安定していたい」がぶつかっているなら、価値観の問題です。前者は数字で比べられますが、後者は数字では決まりません。
衝突しているものが何かを名指しできると、どちらの土俵で考えればいいかが決まります。それだけで、迷いの質が変わります。
そして、価値観どうしがぶつかっている場合は、どちらかを捨てる必要はありません。いまはどちらを先に取るか、という順番の問題として置き直せます。順番なら、あとから入れ替えられます。
迷っていること自体を、判断材料にしない
決められないとき、「迷うということは、この選択が間違っているのかもしれない」と考えてしまうことがあります。
けれど、迷いの強さと選択の正しさは、必ずしも一致しません。大事な決断ほど迷うのは自然なことですし、どちらを選んでも失うものがある状況では、迷いは消えません。
迷いが教えてくれるのは、「両方に価値がある」ということだけです。どちらが正しいかまでは、教えてくれません。
だから、迷いが消えるのを待たなくて大丈夫です。待っていると、決めないという選択を、時間が勝手に確定させてしまいます。
判断の基準にするなら、迷いの大きさではなく、選んだあとに何を失うかのほうです。失うものを言葉にできて、それでも受け入れられるなら、迷ったままでも決めていい状態です。
決めきらないまま、進める方法
答えが出ないまま止まっているとき、いちばん現実的なのは、小さく試すことです。
厚生労働省の調査によると、令和5年度中にキャリアコンサルティングを受けた労働者は11.7%、正社員でも13.9%にとどまります。一方で、条件によっては利用したいと答えた正社員は58.2%でした。
実際には、厚生労働省の委託事業として無料の相談窓口が用意されています。全国47か所の支援センターとハローワーク内の相談コーナーで、対面またはオンラインで利用できます。
この相談では求人紹介を行いません。転職するかどうか決めていない段階でも、話を聞いてもらえます。ひとりで紙に向かって答えが出ないなら、誰かに話す段階に移っていいということです。
試すのは、転職ではなくていい
小さく試すというのは、いきなり転職することではありません。もっと軽いところから始められます。
求人を10件だけ見て、条件のどこに反応したかを記録する
気になる職種の方に、1人だけ話を聞いてみる
社内の別部署の仕事を、実際に見せてもらう
関心のある分野を、数時間だけ学んでみる
どれも、辞めなくてもできます。そして、やってみると必ず何かが分かります。思ったより興味が持てなかった、意外と面白かった、条件面が想像と違った。
この「分かったこと」が、次の自己分析の材料になります。考えても出てこなかった答えが、動いたあとに出てくることは珍しくありません。
偶然を計算に入れるという考え方
決めきらずに進むことは、行き当たりばったりとは違います。キャリア理論にも、近い考え方があります。
ミッチェル、レビン、クランボルツが1999年に発表した計画された偶発性の理論では、キャリアには予期しない出来事が避けられないという前提に立ちます。そのうえで、偶然を排除しようとするのではなく、探索行動によって偶然の機会に出会う可能性を高める、というアプローチが示されています。
つまり、計画を完璧に立てることより、動いて機会を増やすほうが効くという考え方です。10年後を決められないことは、欠点ではありません。
働き方の選択肢そのものを知りたい場合は、やりたい仕事がないまま転職を考えるときの整理のしかたもあわせて読んでみてください。
MOREARIAでは、自分なりのキャリアを選びとってきた女性たちのインタビューを掲載しています。最初から答えを持っていた方は、ほとんどいません。動きながら見つけてきた、そのリアルな物語が、あなたの手を軽くしてくれるはずです。
自己分析で答えが出ないときのよくある質問
不安として残りやすい疑問を、3つ整理しました。
自己分析をやり直せば、いつかは答えが出ますか?
同じ方法で繰り返しても、出てくる材料は変わりません。答えが出ないときは、方法を変えるより、材料を増やすほうが効きます。誰かに話す、求人を見る、実際に体験してみる。外から入ってくる情報が、行き詰まりをほどくことがあります。
何も出てこないのは、自分に何もないからでしょうか?
そうではありません。印象的な出来事が思い出せないのは、感情から入る質問が合っていないだけかもしれません。手帳やメールの履歴を見ながら、事実として何をしたかを並べてみてください。淡々と続けてきたことほど、書き出さないと見えないものです。
答えが出ないまま転職活動を始めても大丈夫ですか?
問題ありません。求人を見ることで、自分が何に反応するかが分かることもあります。ただし応募や内定辞退には相手のいることなので、応募する前に「絶対に避けたい条件」だけは決めておくと、動きやすくなります。
まとめ|答えを出すのではなく、次に確かめることを決める
自己分析で答えが出ないのは、あなたに何もないからではありません。その問いが、考えて分かる種類のものではなかったのかもしれません。最後に、この記事の要点を振り返っておきましょう。
答えが出ないときは、分析ではなく材料が足りていない可能性を疑う
感情から出てこないなら、記録に残った事実から入る
迷いの強さは、選択の正しさとは別のもの
決めきらないまま、小さく試して材料を増やしていい
今日できるのは、いま答えが出ない問いを1つ書き出して、それが「思い出せば分かること」か「外で確かめること」かを分けるだけで十分です。分けられたら、それはもう前に進んでいます。あなたの歩幅で大丈夫です。
SUPERVISED BY
akina
MOREARIA Inc. 代表 / MOREARIA編集長
MOREARIA編集長。「やりたいことはあるけど、踏み出せない」女性に向けて、挑戦する人たちのリアルな物語と、自分らしい一歩を考えるきっかけを届けるメディアを運営。マーケティング支援事業や実践型スクール「MOREARIA LAB」も展開している。
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